スタッフへの福利厚生の一つとして「講習会費用や資格取得費用の補助」を設けている先生方も少なくないと思います。せっかくこのような機会を作っていても、積極的に自ら学ぼうとするスタッフばかりではなく残念に感じている方もいらっしゃるでしょう。
しかし、実はやる気がないわけではなく「歯科助手が取れる資格があるなんて知らない」「どれがいいのかわからない」ということも…。せっかくスタッフとしていてくれているのですから、双方にとって良い関係を長く続けられたらいいですよね。
今回は、モチベーション向上にも役立つ歯科助手が取得できる資格についてご紹介していきます。目的ごとにわけてご説明していきますので、ぜひ参考にしてください。
歯科助手に資格取得は必要?
あなたは、歯科助手に何を求めていますか?
歯科助手は、ご存じの通り特に資格がなくてもできる職業です。自院の仕事さえ覚えてくれれば、事足りるかもしれません。そのため「アシスタントや受付などの業務をしてもらえればそれでいい」とお考えの先生もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし様々な民間資格を利用すれば、歯科助手の活躍の幅を広げるだけではなく歯科医師が治療に集中できる環境を作ることができます。さらに接遇レベルが上がることで、予約のキャンセル率低下やリコール率向上にも繋げられる可能性があるのです。
せっかくスタッフとして雇い入れたのですから、歯科助手にもどんどん活躍してもらいましょう。
次の項では、歯科助手が資格を取得することでどのようなメリットがあるのか解説していきます。
資格取得してもらうことで得られるメリット
歯科助手向けの資格は民間資格のため、国家資格と比較するとどの程度役に立つのか疑問を感じている先生方もいるかもしれません。それでも取得してもらうメリットとは、一体何でしょうか。
①正しい知識を身に付けてもらえる
日々の診療をしながら教えるということは、なかなか難しいものです。スタッフの人数に余裕があれば良いかもしれませんが、多くの歯科医院はそうもいかないのではないでしょうか。
その中で教育するとなると、教育を担当するスタッフへの負担は必然的に大きくなります。時には、それで不満が溜まってしまうことも…。
もちろん医院独自のスタイルは教えていかなければなりませんが、基本的な知識や歯科についての一般的なことについては外部で身に付けてもらう方法もありだと思います。忙しく教える時間が取れない、教育できるスタッフが足りないなどの問題があっても、正しい知識を得てもらうことができるでしょう。
②目標を持つことができるためモチベーションアップに繋がる
一通りの仕事を覚えて在籍期間も長くなると、モチベーションが低下してしまうことは誰にでも起こり得るでしょう。新たな資格取得を目指すことを目標とすることは、モチベーションを向上させ医院の活性化に繋がります。
また資格の内容により、医院にとって様々な面でプラスとなる可能性もあるのではないでしょうか。
③任せられる仕事が増える
資格取得したことによって、新たな仕事を任せられるようになるかもしれません。仕事を任せることで、スタッフ本人も自ずと責任感や当事者意識を持てるようになるものです。
さらに任せられる仕事が増えれば、院長自身も少し余裕を作ることができるでしょう。その時間を新たな知識・技術の習得に生かしたり、経営や集患のために費やすことも可能になります。
④歯科医院の質の向上に繋がる
スタッフが新たな知識や技術を身に付けることにより、患者様に提供できるサービスを広げたり、質を高めたりすることもできるでしょう。
どれがいい?歯科助手が取得できる資格の選び方
「歯科助手に資格を」といっても、どの資格をすすめたらよいのか悩んでしまう先生方もいらっしゃると思います。ここでは資格の選び方の一例をあげていきますので、参考にしてください。
まず最初に「今後どのような歯科医院にしていきたいのかを明確にする」ことが重要です。
レセプト数や患者数の目標でも、売上目標でも構いません。いつまでにどうするのか、期限と数値を具体的に設定してみてください。
それが決まったら、実現するために何をすべきか決めていきます。
その過程で歯科助手にできそうなことはありませんか?
今は無理でも、スキルを身につけていけば可能になることがきっとあるはずです。先入観を持たずに、探してみましょう。
例:「○年後に自由診療の割合を現在よりも○%上げたい」
現在しっかりカウンセリングをする時間がないのであれば、カウンセリングを担当してもらうのも良いと思います。
なぜなら歯科助手は、院長よりもじっくり患者様とお話する時間を取りやすい立場だからです。歯科助手にカウンセリングを担当してもらえば、その分歯科医師は診療に、歯科衛生士はメンテナンスに集中することも可能になります。
医療行為ができない歯科助手でも、このような面で売上に貢献できるようになるかもしれません。
目的別!歯科助手向けの資格5選
歯科助手に取得してもらうことで歯科医院にも役立てられる資格を、目的別にご紹介していきます。
◎アシスタントの質を高め診療に集中したい/メンテナンス患者を増やしたい
アシスタントを主に任せたいのであれば、下記の資格がおすすめです。
歯科助手にアシスタントワークをしっかり習得してもらうことで、診療をスムーズに進められるようになります。
また、歯科衛生士もメンテナンス業務などを多く担当してもらうことができるようになるでしょう。
■ 日本歯科医師会認定歯科助手(公益社団法人日本歯科医師会 歯科助手資格認定制度)
歯科治療を円滑に行うことを目的にした、歯科助手の育成と資質の向上を図るための制度です。職務内容により「乙種第二」「乙種第一」「甲種」の3つの種類があります。
- 乙種第二
主に事務的な仕事に従事
訓練基準の目安時間:40時間 - 乙種第一
主に診療室内の仕事に従事
訓練基準の目安時間:52時間以上 - 甲種
訓練基準の目安時間:420時間以上
《求められる条件》
①甲種歯科助手訓練基準による訓練を修了した者。
②乙種第一歯科助手の資格を有し、3年以上の業務経験を有する者。
③補充研修訓練基準による訓練を修了した者。
※いずれも詳細については、お近くの各都道府県歯科医師会にご確認ください。
■ 歯科アシスタント検定(全国医療技能検定協議会)
受付・会計業務・カルテ整理・診療報酬明細書(レセプト)作成などの事務のほか、器材・薬剤の準備や受け渡し、消毒や後片付けなどのアシスタント業務に必要な能力を証明する検定試験です。検定には1~3級があります。
◎外注費を削減したい/レセプトを任せたい
毎年保険点数の改正などがあり、全てを把握しておくことはなかなか難しいものです。レセプトに関しては外注しているという先生方も多いのではないでしょうか。
スタッフに任せたいと思っても、レセプトについて教えるのは簡単なことではありません。そこで講座などで学んでもらい、医院で活躍してもらうのも良いでしょう。
■ 歯科医療事務検定(全国医療技能検定協議会)
同協会の「歯科アシスタント検定」でも学べる受付・会計・カルテ整理・診療報酬明細書(レセプト)作成などの業務に加え、レセプトの点検についても習得します。
歯科医師や歯科衛生士のサポートを円滑に行うために必要な専門知識(スキル)を有していることを証明する検定試験です。1~3級があります。
◎衛生管理の行き届いた歯科医院にしたい
衛生管理に対しての意識は、この数年間で高まっています。患者様はもちろん働くスタッフにとっても、きちんと管理された歯科医院は安心できるものです。
衛生面を気にする歯科衛生士も少なくないため、衛生管理ができているかどうかは人事採用の面でもプラスになる可能性があります。
特に医療に携わったことのない人にとって、滅菌や消毒の区別は難しいもの。しっかり学んでもらうことで、安心できる衛生管理を保てるでしょう。
■ 歯科感染管理者(NPO法人JAOS感染推進委員会)
高度な感染制御知識を持ち、実践できる人材を養成する資格です。「第二種」と「第一種」があります。
- 第二種歯科感染管理者
歯科に特化した感染制御知識を習得できます。 - 第一種歯科感染管理者
歯科臨床現場での実務スキル向上を目的に「感染管理マニュアル作成」や実践を目的としています。
※「第二種歯科感染管理者」資格者であることが条件です。
■ 滅菌技士(日本医療機器学会)
歯科における感染制御知識を習得し、感染リスクの管理を行います。
- 第二種滅菌技士®
条件
①日本医療機器学会の正会員である
②滅菌供給に関わる実務に通算3年携わっていること」
③日本医療機器学会が作成した“医療現場における滅菌保証ガイドライン”の内容を理解・実行できる
④第二種滅菌技士認定講習を修了している - 第一種滅菌技士®
条件
①第二種滅菌技士認定者
②第一種滅菌技師認定学科講習を修了した後、第一種滅菌技師実技講習を修了した者
◎自由診療を増やしたい/患者様満足度をあげたい/カウンセリングを任せたい
自由診療の割合を増やしたり、患者様満足度を高めるには「カウンセリング」はなくてはならないものです。とはいえ、そのための十分な時間を確保することは余裕がないと難しいでしょう。
歯科に限らず成約に繋げるためには、カウンセリング力が求められます。そこで、カウンセリングの手法や知識を歯科助手に習得し担当してもらう、という方法も検討してみると良いでしょう。
■ トリートメントコーディネーター®(日本歯科TC協会(JADTC))
「患者コミュニケーション」「最新治療・最新予防」「医院経営」についての講習会や試験を受けることで取得可能な資格です。歯科医療関連業務に就いていれば、誰でも受講できます。
■ 歯並びコーディネーター®(日本成人矯正歯科学会)
一般の方の矯正治療への正しい理解を得るために、相談を受けアドバイスできる人材を育成する資格です。歯科医療に従事していれば、日本成人矯正歯科学会の非会員の方も取得できます。
※詳しい条件についてはホームページをご覧ください。
■ デンタル心理カウンセラー®(株式会社オフィスウェーブ)
オフィスウェーブが考案したデンタルコーチングのスキルを学び、ロープロによって実践できるレベルまで身に付けます。患者さんとの良好な関係を構築し、カウンセリングの成功率向上やキャンセル率低下を担えるようになることを目標としています。
◎意識の高い患者様を増やしたい/提供できるサービスを充実させたい
■ アタッチメント食育インストラクター (一般社団法人日本アタッチメント育児協会)
「心理学 + 栄養学 + 歯学」というコンセプトで、子供の発達や心理を含め食育について学ぶことができます。
患者様への指導のほか、院内セミナー開催などにも役立てられます。
■ 嚥下トレーナー(NPO法人摂食介護支援プロジェクト(DHP))
摂食・嚥下機能の知識や技術を習得し、摂食・嚥下障害や介護が必要な方の食事を支援できるようになるための資格です。
ここでご紹介したものは一例で、歯科助手向けの資格はたくさんあります。
ぜひあなたの医院に必要なものを見つけて、役立ててください。
歯科助手のモチベーションをあげるには
スタッフのモチベーションをあげることは、簡単なことではありません。あれこれ試してみては、上手くいかなかったご経験をお持ちの方もきっといらっしゃるでしょう。
「何をしたらモチベーションがあがるのか」は、世代によっても異なりますし、一人ひとり違って当然です。
先生からすれば「こんなに待遇を良くしているのに」と思うことでも、実際に歯科助手などのスタッフが求めていないことであれば、モチベーション向上には繋がらないのです。
では直接聞けばいいのかというと、そういうわけでもありません。上司に本音を伝えることができる人は、なかなかいないからです。
20年以上歯科衛生士として色々な医院に勤務したくさんのスタッフと出会い、教育にも携わってきましたが、誰かに必要とされているのにやる気がない人や辞めていく人は見たことがありません。
マズローの欲求5段階説にもあるように、人には「誰かに認めてもらいたい」という承認欲求があります。
思い起こしてみると、これが満たされない時に辞めていく人が多かったように思います。
患者様から「ありがとう」と言われたり、院長から褒めてもらえたり感謝されたりした時は、恐らくほとんどの人が「頑張って良かった」「ここにいて良かった」と感じるのではないでしょうか。
歯科助手に仕事を任せることで、このような機会を増やすことができます。そのためにも歯科助手に資格取得してもらうことは有益だといえるでしょう。
より良い歯科医院作りに歯科助手向け資格を活用しよう
今回は、歯科助手が取得できる資格やその生かし方についてお話しました。
日々の診療をしながらでは、スタッフを育てるところまで手が回らない先生方も多いと思います。だからといって何もしなければ、少なくとも今よりも良くなっていくことはありません。
スタッフを育てることも重要な仕事と捉え、医院の一員として自信を持って活躍できるように、院長先生にもぜひサポートしていただきたいと思います。
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