先生、こんにちは!
今日は歯科医院経営について、先生方が日々直面されている課題を一緒に考えていきたいと思います。
「歯科医院の経営が厳しい」という声を、多くの先生方から伺うことがあります。
今回は、私たちがこれまで多くの歯科医院の先生方からお話を聞いてきた中で見えてきた「収益に関わる要因」と「改善のためのヒント」をご紹介します。
様々な医院での実例や先生方の声をもとに、経営面での参考情報をお伝えすることで、より理想的な医院づくりの一助となれば幸いです。
歯科医院が儲からない理由
先生方が日々感じておられる「経営の難しさ」。
実はこれ、大きく分けて3つの要因があるようです。
- 歯科医師の過剰と経営の難しさ
- 利益を圧迫する具体的な要因
- 歯科医師の収入問題
一つずつ掘り下げていきましょう。
多くの先生方が共感される内容があるのではないでしょうか。
歯科医師の過剰と経営の難しさ
毎年のように新たな歯科医院が開業される一方で、厳しい経営環境に直面する医院も少なくありません。
その背景には様々な要因があるようです。
歯科医師数と競合環境
2022年の厚生労働省の統計データによると、日本の歯科医師数は約10.5万人、歯科診療所数は約6.8万施設となっています。
地域によっては歯科医院の集中がみられ、競合環境が形成されています。
うちの近所、半径500mに5件も歯科医院があるんです…
というお話、よく聞きます。
この過当競争が、患者の獲得戦争を激化させています。
特に新規開業された先生は「思ったより患者さんが来ない…」という現実に直面することも。
人口減少社会の今、この競争はさらに厳しさを増していくでしょう。
開業の難しさと生存率
「開業すれば安定する」と思っていませんか?
実は、開業には大きなリスクが伴います。
チェアだけで1台800万円、内装工事やレントゲン設備など含めると、最低でも5,000万円以上の初期投資が必要です。そして開業後も固定費が重くのしかかります。
現実的に言うと、開業後5年以内に経営が軌道に乗らず閉院するケースも少なくありません。
「患者さんが来る」という前提だけで開業すると、厳しい現実が待っているかもしれませんよ。
経営者としてのスキル不足
これ、多くの先生が直面する壁です。
素晴らしい治療技術をお持ちでも、経営者としてのスキルは別物なんですよね。
大学で治療技術を学んできた一方で、医院運営の方法については別の学びが必要でした
という声をよく伺います。
先生方は臨床家であると同時に、財務管理、チームマネジメント、地域とのコミュニケーションなど、多岐にわたる役割も担っています。
この二つの役割のバランスが、医院運営の鍵となることが多いようです。
例えば、次のような課題に直面することはありませんか?
- 医療に集中したいが、経営数字の把握にも時間を割く必要がある
- チーム全体のモチベーション維持と技術向上の両立
- 地域における医院の特色の伝え方
これらは臨床スキルとは別の側面での挑戦です。
医療の専門知識と経営の視点を両立させることで、医院運営がよりスムーズになるかもしれません。

利益を圧迫する要因
さて、次に具体的に利益を圧迫している要因を見ていきましょう。
「なんとなく儲からない」ではなく、数字で見える化することが改善の第一歩です。
全体的な売上の少なさ
まず大前提として、多くの歯科医院では「売上そのものが少ない」という課題があります。
様々な歯科医院の事例を拝見すると、同じ地域でも月の医業収入に大きな差がある場合があります。
医療の質に違いがなくても、経営面で異なる結果となることがあるのはなぜでしょうか?
主な要因として考えられるのは…
- 患者層と来院頻度 - 地域特性や医院の立地によって、来院される患者さんの層や頻度に違いがあります
- 診療内容の構成 - 保険診療と自費診療のバランスや、提供している専門治療の種類が収益構造に影響します
「患者数の確保が難しい」と感じられることもあるかもしれませんが、必ずしも患者数だけが重要なわけではありません。
一人ひとりの患者さんに最適な治療を提供することで、結果として医院の安定にもつながるケースも多いようです。
チェア当たりの生産性について
歯科医院では「チェアがあるのに十分に活用できていない」という状況が見られることがあります。
チェアが何台あっても、それぞれが効率的に稼働していなければ、設備投資が十分に生かされていない状態となります。
生産性に影響する主な要因
- 予約管理の最適化(スケジュールの隙間時間)
- 診療の流れや動線の効率性
- スタッフ配置とコミュニケーション
業界では「チェア1台あたり月200万円」が一つの目安とされることもあります。
3台のチェアがあれば月600万円程度の売上が理想とされていますが、もちろん地域や診療内容によっても異なります。
予約システムの見直しやスタッフ間の連携強化によって、チェアの稼働率を高めることができた事例も多く聞かれます。
歯科材料費の管理
歯科材料費も医院経営に大きな影響を与える要素の一つです。
厚生労働省の医療経済実態調査によると、歯科医院における材料費率は売上の7〜8%程度が平均的な水準とされています。
この比率が大きく上回っている場合は、見直しの余地があるかもしれません。
特にインプラントなどの高額材料は在庫管理が重要です。
材料費の効率化について、参考になる事例として
- 複数の納入業者の比較検討
- 適切な在庫管理による無駄の削減
- 使用頻度の高い材料の優先的な見直し
材料費の見直しにより、経費削減に成功した事例も多く聞かれます。
日常的に使用する材料の購入方法や在庫管理の工夫が、長期的には大きな違いを生み出すことがあります。

歯科医師の収入問題
歯科医師の収入問題について考えてみましょう。
平均年収と月収
歯科医師の平均年収は約810万円、月収で約62万円と言われています。
もちろんこれは平均値であり、地域差や経験年数、開業か勤務かによっても大きく異なります。
多くの先生方は「医療人としての使命」と「生活者としての側面」の両立に心を砕かれていることと思います。
収入面で感じる課題があれば、それは単に金銭的な問題ではなく、「より良い医療を提供するための環境づくり」という視点で考えることも大切かもしれません。
勤務形態による年収の違い
勤務形態によって収入には大きな差があります。
- 大学病院勤務医:約500〜600万円
- 一般勤務医:約690〜700万円
- 雇われ院長:約1,400〜1,600万円
- 開業医:約2,800万円
開業医の収入が高いのは事実ですが、そこには大きなリスクと責任が伴います。
「開業したら儲かる」という考えは危険で、むしろ「開業したら経営者になる」という意識が重要です。
また、雇われ院長という選択肢も考えてみてはいかがでしょうか?
経営リスクを抑えつつ、比較的高い収入を得られる可能性があります。
年齢による年収の変動
歯科医師の収入は年齢とともに変化します。
特に45〜49歳でピークを迎え、平均で約1,250万円になる傾向があります。
若手の先生は「今は収入が少なくても将来増えるはず」と考えがちですが、それは自動的に起こるものではありません。収入増加には明確な戦略が必要です。
例えば、若いうちから経営スキルを学び、専門性を高めることで、早い段階から高収入を得ている先生もいます。「いつか良くなる」ではなく「今から行動する」ことが大切です。

歯科医院経営の打開策9選
さて、ここからは経営改善のためのヒントをご紹介します。
先生方の医院の状況に合わせて、参考になりそうなアプローチをお選びいただければと思います。
経営スキルの向上
まずは医院運営に関わる様々な側面についてのポイントです。
コミュニケーション環境の整備
歯科医師としての専門性に加えて、患者さんやスタッフとの円滑なコミュニケーション環境を整えることが、医院全体の雰囲気づくりに大きく貢献します。
患者さんとの信頼関係構築はもちろん、チーム全体の連携も重要です。
スタッフ一人ひとりが持つ能力を最大限に発揮できる環境づくりが、結果として患者さんへの良質な医療提供につながります。
現場で効果が見込めるアプローチとして
- 定期的なチームミーティングの時間確保
- スタッフからの改善提案を取り入れる仕組み
- 患者さんへの丁寧な説明時間の確保(特に治療計画の提案時)
「先生の説明が分かりやすく、安心して治療を受けることができました」という患者さんの声が自然と生まれる医院づくりが理想的です。
診療環境の整備
患者さんが「また来たい」と思える医院づくりは継続的な来院につながる可能性があります。
待合室の環境改善や清潔感のある内装にすることで、患者さんの印象が良くなり、新規患者の増加につながる可能性があります。
快適さ、安心感、清潔感などは患者さんの評価に直接影響する要素です。
特に重要なポイント
- 清潔感のある内装(特にトイレは重要!)
- リラックスできる待合室の雰囲気
- スタッフの身だしなみと笑顔
- 最新設備の導入(患者さんに見える形で)
「この医院は雰囲気が良い」という評判は、地域での良い口コミにつながることがあります。
開業計画の立案
これから開業される先生へ。
綿密な計画なしでの開業は「失敗への近道」です。
成功している医院は、開業前から3年後、5年後のビジョンを明確に持っています。
「なんとなく開業」では厳しい時代なんです。
具体的に計画すべきこととして、
- 立地選定(競合調査は必須!)
- 初期投資と返済計画
- 月々の固定費の見積もり
- 必要な患者数と売上の試算
- 差別化ポイントの明確化
「この地域にはこんな歯科医院が必要だ」という確信を持ってから開業に踏み切るのがおすすめです。
その想いが成功への第一歩です。

収入増加のための戦略
次に、具体的な収入増加策を見ていきましょう。
自費診療のご案内
医療制度の現状を考えると、保険診療だけでは提供できる医療の範囲に制約があることも事実です。
患者さんの多様なニーズに応えるためにも、自費診療の選択肢を適切に提示することが意義あるアプローチと言えるでしょう。
もちろん、「自費診療を増やす」ということではなく、「患者さんにとって最適な治療の選択肢を提供する」という医療の本質が最も重要です。
患者さんが納得して選択できる環境づくりがポイントです。
効果的な自費診療の選択肢提示において大切なこと
- 患者さんの状態や希望に合わせた段階的な提案
- 写真や模型などを活用した視覚的で分かりやすい説明
- 料金体系の透明性と選択肢の明確な提示
- チーム全体での情報共有と患者さんへの一貫した説明
「費用対効果」ではなく「患者さんにとっての価値」を伝えることができれば、自然と適切な治療法が選ばれる流れが生まれます。
インプラントなど専門治療の強化
専門性の高い治療は、医院の差別化と高収益につながります。
特にインプラント治療は、1本30〜40万円と高単価であり、収益性が高い治療です。
ただし、技術と設備への投資が必要です。
【専門治療強化のステップ】
- 必要な技術研修を受ける
- 適切な設備投資を行う
- 症例を積み重ねる
- 症例写真などを使ったマーケティング
「うちの医院の得意分野はこれ」と言える専門性があると、遠方からも患者さんが来院するようになりますよ。
歯科医療の質の向上
当たり前のことですが、最終的には「治療の質」が全てです。
技術力向上への投資は、長期的に見れば必ず回収できます。
患者さんは「上手な先生」を見抜きますし、口コミで広がります。
【質向上のために取り組むべきこと】
- 定期的な勉強会や学会参加
- 症例の振り返りと改善
- 最新技術の習得
- チーム全体のスキルアップ
「あの先生の治療は本当に上手」という評判は、どんな広告よりも効果的です。
そして、そのような評判を持つ医院は、自費診療の提案も受け入れられやすくなります。

コスト削減の工夫
収入増だけでなく、支出の見直しも重要です。
ムダなコストを削減して利益率を高めましょう。
歯科材料費の削減
先ほども触れましたが、材料費は売上の7〜8%が適正です。
これを超えている場合は見直しが必要です。
具体的な削減策として、
- 複数の業者から見積もりを取る
- 使用頻度の低い材料の見直し
- 在庫管理の徹底(使いきれずに期限切れになっていませんか?)
- 類似品での代替検討
「小さな積み重ね」が大きな利益につながります!
人件費の最適化
個人クリニックの場合、人件費は売上の20%以内が目安です。
これを大きく超えると経営を圧迫します。
ただし、単純に「人件費を削れば良い」わけではありません。
優秀なスタッフは医院の財産です。
- 適切な業務分担(歯科医師がやるべきことと、スタッフに任せることの明確化)
- 勤務シフトの最適化(患者数に合わせた人員配置)
- 能力に応じた給与体系(頑張るスタッフが報われる仕組み)
- 残業時間の削減
「少ない人数で高いパフォーマンス」を実現するチーム作りが理想です
治療費の適正化
「安売り競争」は避けるべきです。
適正な治療費設定が長期的な経営安定につながります。
特に自費診療の料金設定は難しいものです。
「安すぎず、高すぎず」が重要です。
【料金設定のポイント】
- 競合医院の価格調査
- コストと利益のバランス
- 提供する価値に見合った設定
- 分かりやすい料金表の作成
「この治療にはこれだけの価値があります」と自信を持って説明できる料金設定を心がけてください!
いかがでしたか?
「歯科医院の経営課題」と「その改善アプローチ」について、現場での事例を交えてお伝えしました。
もちろん、先生方の臨床現場は千差万別で、それぞれに固有の課題があることと思います。
これらの提案はあくまでも参考として、先生方の優れた判断力と専門知識に基づいて、医院に合った方法を選択していただければと思います。
先生方がこれまで積み上げてこられた素晴らしい医療技術と、効果的な経営アプローチが組み合わさることで、より多くの患者さんに質の高い歯科医療を提供できる環境づくりができれば幸いです。
先生方の医院がさらに発展されることを心より願っています。