歯科衛生士を辞めて何してる?辞めずに働き続けられる環境とは

定着

こんにちは、なるほどデンタル人事の迫田です。
この記事に辿り着いたということは退職経験のある歯科衛生士さんか、これから歯科衛生士になる方、歯科衛生士さんを雇用している歯科医師の先生でしょうか?
歯科衛生士を雇用している歯科医師の先生であれば、ほとんどの方が歯科衛生士スタッフの退職を経験をしているかと思いますが、先生の歯科医院を退職したその後ってご存知ですか?退職後は全く接点がなく動向は不明という方も多いのではないでしょうか?
今回は「歯科衛生士を辞めて何してる?」をテーマに、歯科衛生士採用の観点と絡めて記事を書きたいと思います。

人材不足といわれている歯科衛生士。

厚生労働省によると、令和2年度の就業歯科衛生士の人数は14万2,760人といわれています。

しかし、一般財団法人 歯科医療振興財団「令和元年度 事業報告書」(p.24)を見ると、令和元年度末における歯科衛生士免許の登録者数は、29万1,910名となっています。

つまり、資格を持っているにも関わらず、歯科衛生士として働いていない人が半数以上もいるのです。

今回の記事では「歯科衛生士を辞めた人が、その後何をしているのか?」について解説し、あわせて

についてもデータを元に見ていきます。

歯科衛生士が辞めずに働き続けられる環境を考えていきましょう。

歯科衛生士を辞めて何してる?

歯科衛生士を辞めた後の選択肢としては、主に以下のことが考えられます。

それぞれの内容について、1つずつ解説していきます。

歯科衛生士として別の職場へ転職する

「歯科衛生士の仕事は好きだけど、今の職場に不満がある」という人は、今の職場を辞めたあとに別の職場へ転職しています。

職場に対する不満としては

  • 給料に不満がある
  • 院長やスタッフとの人間関係が合わない
  • 結婚や出産などのライフスタイルの変化により、就業時間が合わない

などがあります。

このような場合、歯科衛生士の仕事が嫌いというわけではありません。

働きやすい環境を整備することで、新しい歯科衛生士の採用が期待できるでしょう。

異業種へ転職する

歯科衛生士としての仕事が合わずに辞めた人は、異業種への転職をしています。

  • 受付業務やカルテの記入などで培われた力を活かして事務職に就く
  • 患者さんと接するなかで養われたコミュニケーションスキルを活かし、接客業を行う

など、業種はさまざまです。

歯科衛生士は国家資格のため、一度辞めても資格を活かして再就職しやすいのが大きな特徴。

そのため歯科衛生士として働きながら、

  • マーケティング
  • 経営
  • 人材育成

など、通常の衛生士業務とは少し違った分野を提案することで、活躍する人もいるかもしれません。

歯科医院のコンサルティングや教育担当フリーランスの衛生士として活躍する

歯科衛生士として働いていた経験を活かして、

  • 歯科医院のコンサルティングを行う
  • 歯科衛生士の教育機関で教員として勤務する
  • 新人衛生士への教育を行うフリーランスとして活動する

という道へ進む場合もあります。

フリーの歯科衛生士は、人脈を持ち合わせている場合も多いです。

フリーランスと契約することで、得られるメリットもあるでしょう。

退職後、就業していない

退職後、就業せずに専業主婦となっている場合もあります。

この場合、結婚や出産などのライフスタイルの変化に伴って、就業時間などの条件が合わず仕事と家庭の両立が困難になったと考えられます。

また「家庭を優先するために一旦辞めて、子育てが落ち着いたら復帰しよう」と考えている人もいるでしょう。

  • ライフスタイルの変化にも柔軟に対応できる
  • 子育て中は時短で働ける

など、それぞれの価値観や環境に合わせた働き方ができると、歯科衛生士を辞めずに続けられる可能性が高くなると考えられます。

1回以上勤務先を変更したことがある割合は76.4%

ここからは、公益財団法人 令和元年度 歯科衛生士の勤務実態調査報告書からデータを引用し、歯科衛生士の勤務の実態について見ていきます。

この調査は、日本歯科衛生士会の会員向けに実施されたアンケートで、全体の回答人数は8,932名です。

注意点としては、問題によって回答人数が違っていたり、歯科衛生士全体の意見を調査したアンケートではなかったりすること。

しかし回答者が約9,000名いることから、歯科衛生士の勤務実態について考えていくうえでは十分参考になるデータ数であると考え、引用しながら考察していきます。

公益財団法人 令和元年度 歯科衛生士の勤務実態調査報告書によると、76.4%の歯科衛生士が「1回以上勤務先を変更したことがある」と回答していました。

各項目の詳しい割合は以下のとおりです。

項目割合(%)
勤務先を変わったことはない22.2%
1回ある21.4%
2回ある17.8%
3回ある17.6%
4回以上ある19.6%
無回答4.1%
引用元:公益財団法人 令和元年度 歯科衛生士の勤務実態調査報告書 図4-6

一方で、一度も勤務先を変わったことがない人も22.2%存在しています。

その差はどこからくるのでしょうか。

勤務先を変更したことがある人を対象に、理由を聞いたアンケート結果が以下となります。

【現在も就業中】歯科衛生士が勤務先を変更した理由

続いて、現在も歯科衛生士として就業している人が、勤務先を変更した理由を見てみましょう。

勤務先変更の理由全体(6,011名)常勤全体(2,924名)非常勤全体(2,801名)
結婚29.3%20.9%37.5%
経営者との人間関係29.0%31.5%26.6%
出産・育児28.7%21.1%36.8%
給与・待遇の面22.3%29.2%15.3%
仕事内容22.0%26.4%17.8%
勤務形態・勤務時間19.5%23.1%16.0%
仕事内容のレベルアップのため15.9%20.6%11.4%
引用元:公益財団法人 令和元年度 歯科衛生士の勤務実態調査報告書 図4-8 (無回答は非掲載)

全体で見ると、勤務先を変更した理由は主に

  • 経営者との人間関係
  • 結婚
  • 出産・育児

であることがわかります。

またこのアンケート結果を見ると

  • 常勤の歯科衛生士は、院長との人間関係
  • 非常勤の歯科衛生士は、ライフスタイルの変化に対する柔軟性

を重視し、求めていることが推測できます。

歯科衛生士に長い間働いてもらうためには、人間関係を中心とした職場環境づくりと、ライフスタイルに対応する柔軟性が必要です。

とはいえ、ここ最近の調査では、出産や結婚で退職する人の割合は下がり続けており、全国的に結婚や出産しても女性が働きやすく、戻ってきやすい環境が整備されていっているとの結果も出ています。
それとは反対に、退職理由が人間関係という割合は年々増えている傾向に・・・

【現在は非就業】歯科衛生士を辞めた理由

以下の表は、現在就業していない歯科衛生士1,063名を対象に「最後に勤務していた職場を退職した理由」を聞いたアンケートです。

辞めた理由割合(全体=1,063名)
出産・育児16.7
経営者との人間関係15.6
自分の健康14.4
家庭の事情13.0
給与・待遇の面12.9
勤務形態・勤務時間11.7
結婚11.6
歯科以外への興味10.7
仕事内容9.3
同僚との人間関係7.6
介護・看病7.5
長時間勤務・過重労働7.0
先輩との人間関係6.1
自分のスキルの限界5.9
仕事にやりがいを感じない4.9
仕事内容のレベルアップのため2.7
人材育成プログラムの不備2.7
家族の転勤2.4
その他29.6
引用元:公益財団法人 令和元年度 歯科衛生士の勤務実態調査報告書 図11-1 (複数回答)

「その他」の内訳は、多い順に

  • 定年・高齢のため
  • 他の職種に転職
  • 自身の病気
  • 閉院・休業

となっています。

ライフスタイルの変化職場の人間関係が上位に挙がっているので、現在も就業中の歯科衛生士と比較しても、辞めた理由に大きな差はないといえるでしょう。

ということは、職場環境や働き方の柔軟性を打ち出すことで、一度辞めてしまったブランクのある歯科衛生士を雇うことにも希望がもてます。

結婚や出産など、ライフスタイルの変化に対応できる環境を整えることで、以下のようなメリットが得られますよ。

  • 辞めずに働き続けてもらえる可能性が高くなる
  • ブランクのある歯科衛生士にも打ち出せるアピールポイントとなる

ここで1つ、具体例を見ながら考えていきましょう。

◾️対象者
3歳の子どもがいる歯科衛生士

◾️状況
・出産を機に育休を取得
・一度は復帰するも、家事育児に追われて大変だったため、現在は歯科衛生士を辞めて専業主婦
・子どもが小学生になったら、復帰しようと考えている

◾️提案内容(例)
・1日2時間〜のパート勤務

もしこの歯科衛生士に「1日2時間だけなら、今の私にもできるかも?」と思ってもらえれば

  • まずは1日2時間だけ働いてもらう
  • 3年後、子どもが小学生になったら正社員としてしっかりと働いてもらう
  • あるいは長時間のパートとして働いてもらう

など、即戦力となるでしょう。

  • 今だけをみるのではなく、長期的な視点でみた女性のライフスタイルを尊重すること
  • 柔軟な働き方の実績を積むこと

これらを行うことで、未来への採用投資にもなりますよ。

歯科衛生士を辞めてからの年数

続いては、現在就業してない歯科衛生士1,063名を対象に、歯科衛生士を辞めてからの期間を訪ねたアンケート結果です。

歯科衛生士を辞めてからの期間割合(全体=1,063名)
1年未満17.8%
1年以上3年未満18.1%
3年以上10年未満23.6%
10年以上20年未満20.9%
20年以上16.8%
無回答2.8%
引用元:公益財団法人 令和元年度 歯科衛生士の勤務実態調査報告書 図11-5

最も多いのは、辞めてから3年以上10年未満の割合、続いて10年以上20年未満となっています。

これは、出産や育児で辞めた歯科衛生士が多く、現在も子育て中の方が多いということが推測できるでしょう。

【年代別】再就職の意向

年代別に、再就職する意向があるかどうかを尋ねたアンケート結果を見てみます。(「-」部分は非記載)

年代(全体=1,063名)すぐにでも
再就職したい
条件が合えば
再就職したい
そのつもりはないわからない無回答
20〜24歳(16名)12.550.06.325.06.3
25〜29歳(28名)25.064.3
30〜34歳(87名)10.362.19.216.1
35〜39歳(88名)60.215.918.2
40〜44歳(85名)50.621.225.9
45〜49歳(105名)5.744.829.518.1
50〜54歳(130名)34.630.028.5
55歳以上(516名)16.164.314.1
引用元:公益財団法人 令和元年度 歯科衛生士の勤務実態調査報告書 図11-6
  • ・20代の回答者が少ないこと
  • ・55歳以上の回答者が多いこと

これらの理由により、割合に対する人数比は異なりますが、40代までの歯科衛生士の50%以上が再就職したいと考えていることがわかります。

またどの年代も「条件が合えば再就職したい」と答えている人の割合が最も多いです。

  • ・辞めずに歯科衛生士に働き続けてほしい
  • ・一度辞めた歯科衛生士に戻ってきてほしい

このような場合は、ライフスタイルの変化にも柔軟に対応できる環境づくりが必要といえるでしょう。

最後に勤務していた職場への再就職の意向

上の段落で、歯科衛生士として「再就職したい」と回答した人を対象に、最後に勤務していた職場へ再就職したいかを尋ねた質問です。(「-」部分は非記載)

年代(全体=393名)すぐにでも
再就職したい
条件が合えば
再就職したい
そのつもりはないわからない無回答
20〜24歳(10名)0.020.080.00.00.0
25〜29歳(25名)4.032.048.08.08.0
30〜34歳(63名)9.530.255.64.80.0
35〜39歳(56名)1.833.958.95.40.0
40〜44歳(44名)2.325.068.24.50.0
45〜49歳(53名)11.369.813.2
50〜54歳(49名)0.028.663.36.1
55歳以上(91名)23.163.77.7
引用元:公益財団法人 令和元年度 歯科衛生士の勤務実態調査報告書 図11-7

全体的にみると、20〜40%程度の人が「すぐにでも再就職したい」「条件が合えば再就職したい」と答えています。

特に25歳〜44歳の人たちは「条件が合えば再就職したい」と答えている割合が多いです。

この年代は結婚や出産・育児など、生活の変化が大きい年代。

  • ライフイベントがあっても、安心して仕事と家庭を両立できるような環境づくり
  • 以前勤務してくれていたスタッフに対してスカウトができる、信頼関係の構築

が大切だと考えられます。

一方で、多くが新卒で入ったと推測される20歳〜24歳の人たちは、80%の人が「最後に働いていた職場に戻るつもりはない」と回答しています。

これは、就職してみたものの

  • ・思っていた業務内容と違う
  • ・院長やスタッフと合わない
  • ・残業が多い

など、働く前後での印象や労働環境が異なることにより生じている結果だと考えられます。

これらに対する対応策は、求人採用の段階で

  • 具体的な業務内容
  • 自院の理念
  • 院長の思い

これらをできるだけ詳しく開示し、ミスマッチを減らすことで解決できるでしょう。

再就職する際に障害となっている内容

「【年代別】再就職の意向」で「再就職したい」と回答した人を対象に、再就職する際の障害の有無を尋ねると、全体で86.3%の人が「障害がある」と答えています。

具体的な障害の内容は、以下のとおりです。

障害と感じる項目(全体=339名)割合(%)
勤務時間57.2
自分のスキル47.2
高齢のため27.4
給与・待遇の面24.8
相談窓口がない8.3
その他28.6
引用元:公益財団法人 令和元年度 歯科衛生士の勤務実態調査報告書 図11-10 (複数回答)

「その他」の内訳は、多い順に

  • ・育児や子どもの預け先
  • ・自分の健康問題

となっています。

アンケート結果をみると、再就職したい歯科衛生士が最も障害と感じているのは勤務時間であることがわかります。

また、その他の内訳に「育児や子どもの預け先」が入っているので、子育てとの両立に対して悩んでいる歯科衛生士が多いということが考えられます。

また、障害と感じている内容が「自分のスキル」と答えている人も47.2%と多いです。

ブランクがあいていることに対して

  • ・ついていけるか心配
  • ・うまくできなかったらどうしよう

このような感情面での不安があるのでしょう。

これらに対する解決策としては

  • 勤務時間を調整しやすい環境をつくる
  • 時短勤務が取れるようにする
  • 子育て中の人が何人くらい働いているのか開示する
  • 「ブランクがあっても大丈夫」と求人票に記載する
  • 仕事内容をできるだけ細かく記載する

これらのことが考えられます。

自分が職場で働いている様子をイメージできると、応募が集まりやすくなります

一度退職した歯科衛生士がどのようなことに対して不安を感じているのか、一度じっくり考えてみるとよいでしょう。

まとめ:結婚や出産があっても働き続けられる環境をつくろう

今回の記事では、

  • 歯科衛生士を辞めた人は何をしているのか
  • 辞めた理由
  • 再就職の際に障害と感じる内容

これらの内容について解説してきました。

歯科衛生士は女性が多い職業です。

結婚や出産など、ライフスタイルの変化に対応できる環境を整えることで、辞めずに働き続けてもらえる可能性が高くなります。

ライフスタイルの変化にも柔軟に対応できることを、どうやって発信すればいいのでしょうか?

歯科衛生士が辞めにくいのは、どんな職場なんだろう?

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