人事評価への不満「評価が低いから頑張らない」なんて声が出ていませんか?原因と対処法を解説

人事評価

人事評価制度を導入したものの、「評価が低いから頑張りたくない」「●●さんより評価が低いなんて納得できない」など、自院のスタッフからの不満の声が出ていてお困りの院長や人事担当者の方も少なくないのではないでしょうか?

実は、評価に対して何かしらの不満を持っているスタッフは7割以上いるとも言われています。不満を放置していれば、やがてはスタッフを失うことに繋がり兼ねません。また、人員不足は経営状況にも影響を及ぼす可能性があります。

この記事では、歯科医院のスタッフが人事評価への不満を持つ原因と、その原因をふまえて、人事評価制度の運用でやってはいけないことや注意点を解説します。

人事評価制度とは

人事評価制度」とは、スタッフの働きぶりやスキルを評価し、昇給や昇格などの待遇に反映する制度のことです。
適切な人事評価を実施することで、自院の経営成果や業績向上を目指すことができます。
人材育成の実施に加え、配置転換の決定など人材マネジメントにも用いられます。

人事評価が低いスタッフが不満を持つ原因

人事評価が正しく評価されないと「自分は認めてもらえていない」と感じ、スタッフは人事評価制度に対し不満を持ちます。それらの不満は、スタッフのモチベーション低下や離職率増加につながる可能性もあります。
スタッフの不満を防ぐためには人事評価制度の見直しやスタッフへの適切な対応が必要となりますが、まずは、スタッフが不満を持つ原因について解説します。

経営コンサルティングを行う識学社による【人事評価の“モヤモヤ”に関する調査】によると、人事評価制度に不満を感じる原因の多くが「評価基準の不明確さ」によるものです。

・自社の人事評価の満足度は、「満足」:「不満」=5.5:4.5。
・人事評価制度に不満の理由
 1位「評価の基準が不明確」48.3%
 2位「評価結果が報酬に反映されない」30.9%
 3位「評価する人によって厳しさに差がある」28.1%

※参考:人事評価の“モヤモヤ”に関する調査|株式会社識学

ここでは、医院のスタッフが不満を持つ原因を大きく4つに分けて解説します。

①人事評価に納得いかない

自分へ評価に納得がいかず、不満を感じるケースです。
評価結果だけを提示され、評価に対するフィードバックがなかったり、もともと評価者と評価を受けるスタッフとの間に信頼関係が築けていない場合はとくに不満がふくらみやすいです。

📝不満の一例
・正当に評価されていると思えない
・評価基準や結果・理由に納得できない
・評価項目が分かりにくい
・評価者が信用できない
・評価者によって評価基準にバラつきがある

②努力が評価につながらない

スタッフ自身では努力したにも関わらず評価されなかったことにより、不満を感じるケースです。
「努力をしても無駄だった」「上司(評価者)に努力を認めてもらえない」と感じてしまうと、仕事に対するモチベーションも低下します。
成果を重視すると、難易度の高い目標を掲げ達成度が下がる場合などに評価が下がってしまうため、こういった不満が発生しやすいです。

📝不満の一例
・努力しても評価されず無駄だったと思う
・評価者に自分の努力が伝わっていない
・いくら頑張っても評価されない、評価に連動していない

③給与などの待遇が上がらない

待遇面で不満を感じるケースもあります。
人事評価が低いスタッフは、昇給・昇格も難しく、評価や待遇に納得いかずに、さらにモチベーションが下がることになります。

④制度自体そのものに納得いかない

人事評価制度は待遇やキャリアアップなどスタッフにとって良い影響がある制度ですが、制度の導入自体に不満を感じるスタッフもいます。
公平・客観的な評価制度の構築は難しく、その点で懸念を感じてしまうためです。
また、事前の評価制度導入における説明が不足しているために不満が発生している可能性もあります。

人事評価制度の運用でやってはいけないこと・注意点

すべてのスタッフが納得する完璧な人事評価制度を構築することは難しいですが、スタッフの不満を少しでも軽減する運用を実現するために、やってはいけないことや注意点を3点ご紹介します。

①明確な評価基準を設けられているか

「明確な評価基準がない」ことが人事評価制度が上手く機能しない大きな原因のひとつです。
医院で明確な評価基準を定めていない場合、評価者によりバラつきがでるため、公平性の欠けた評価がされてしまいます。
公平性の欠けた評価は、スタッフの不満にもつながるため、注意が必要です。

②人事評価が待遇につながるものになっているか

通常、人事評価制度はスタッフの待遇を決める基準となります。
そのため、評価が昇給や昇格に反映されないと、スタッフのモチベーションが低下してしまいます。
人事評価に見合った待遇の用意をしましょう。

③納得感のある評価制度の運用ができているか

①②にもつながりますが、目的から評価基準・項目、運用方法までスタッフに納得してもらえているかが重要です。
人事評価制度の導入前の説明から、個別での面談、評価後のフィードバックまで、しっかりと計画して進める必要があります。

スタッフのモチベーション低下を防ぐための6つのポイント

人事評価への不満を持つスタッフのモチベーション低下を防ぐためのポイントを6つご紹介します。

①評価エラーをなくす(個人的な感情で評価しない)

評価エラー」とは、評価者の個人的な感情や心理的作用により実際とは異なる評価を行うことです。
人事評価は人間が行うため、どうしても評価エラーを起こしやすいです。

代表的な評価エラーを6つご紹介します。

ハロー効果

目立つ成果や特徴に引きずられ、偏った評価を行うことを「ハロー効果」といいます。
成果成績に関係なく、発言が多く目立つスタッフを高く評価してしまうことなどです。

ハロー効果による評価エラーを防ぐには、明確な評価基準を定めることが重要です。

📝意識すべきこと
● 明確な評価基準を定める
● 評価項目はひとつずつ評価する
● 偏見や好き嫌いで評価しない
● 思いつきで評価しない
● 具体的な行動に基づいて評価する
● 評価項目が他の項目とどのように関連しているのかを理解する

寛大化傾向

評価が全体的に甘くなってしまうことを「寛大化評価」といいます。
「嫌われたくない」「評価をする相手に良く思われたい」という気持ちから起こる評価エラーです。

寛大化傾向による評価エラーを防ぐには、「評価をする相手の成長のために甘い評価は行わない」という意識が必要です。

📝意識すべきこと
● 絶対基準による評価を意識する
● 評価項目の基準を明確にして、基準に沿った評価を徹底する
● 目標面接を実施し、評価基準について相互確認をする
● 自分の評価に自信を持つ
● 評価するスタッフを常に観察・分析する

厳格化傾向

評価が全体的に厳しくなってしまうことを「厳格化傾向」といいます。
教育熱心で厳格な評価者の場合に起こりやすい評価エラーです。

厳格化傾向による評価は、スタッフが正しく評価されない場合、不満を持つ原因となるため、評価者により偏りがないよう一定の基準に則り評価を行う意識が必要です。

中心化傾向

評価が全体的に中間値に偏ってしまうことを「中心化傾向」といいます。
5段階評価のうち、「3」の評価に集中してしまうことなどです。

中心化傾向による評価エラーを防ぐには、評価の相手の様子をよく見て、自信を持って評価を行う必要があります。

📝意識すべきこと
● 評価項目の基準を明確にして、基準に沿った評価を徹底する
● 基準に対して評価を行う見極め力を養う
● 評価するスタッフとの信頼関係を構築する

論理的誤差

関連する評価項目同士で同じような評価をしてしまうことを「論理的誤差」といいます。
自己啓発を意識しているスタッフを評価する際に、●●力も優れているだろうと事実ではなく推測で判断し、評価してしまうことなどです。

論理的誤差による評価エラーを防ぐには、それぞれの評価項目について行動・事実から評価することが大切です。

📝意識すべきこと
● 推測・想像で判断しない
● 能力評価や成績評価の関連について理解する

対比誤差

過去の評価者自身との比較で評価を行ってしまうことを「対比誤差」といいます。
評価するスタッフの行動・事実を評価基準にしなければならないところを、、自分の主観的な価値判断で評価してしまうことです。

対比誤差による評価エラーを防ぐには、評価するスタッフに設定した基準に則して評価を行うことが大切です。

📝意識すべきこと
● 評価するスタッフに設定した基準に則して評価を行う
● 評価するスタッフに能力以上のことを不当に期待しない
● 評価者自身が自己分析して自己評価を認識する

②明確な評価軸を設けて明示する

能力・スキル」「目標達成・成果」「意欲・行動・態度」の3つの評価軸において、評価項目と評価基準を明確に定めましょう
評価項目や基準が明確であれば、スタッフの納得感を得ることができます。
その上で、評価基準はしっかりとスタッフに明示・共有しましょう。
どのような成果を期待されているのかをスタッフが認識していれば、人事評価で大きく認識のズレが発生することが少なくなります。

③評価のフィードバックを行う

評価後のフィードバックの機会は必ず設けましょう
評価に対して疑問や不満が多少あっても、フィードバックですり合わせができると解決できるケースが多いです。
なぜその評価になったのか」「どう改善すべきか」「目指してほしいあるべき姿」を丁寧に説明し、お互いの認識のズレをなくすようにしましょう。

④コミュニケーションを大切にする

人事評価の上で、評価者と評価を受けるスタッフの信頼関係は重要です。
信頼関係が構築できていれば、人事評価への納得感はもちろん、評価者も自信を持って評価を行うことができます。
例えば、1対1で対話をする1on1ミーティング、スキマ時間やランチタイムでの面談実施などの機会を設けることをおすすめします。
その他、日頃から積極的に声がけを行いましょう。「頑張ってるね」などの一言の声がけで、「自分のことをよく見てくれている」と感じ、仕事に前向きになれるはずです。

⑤評価者への教育を行う

公平な評価を行うためには、基準を明確にするだけでなく、評価者の育成も大切です。
すべての評価者が一定の基準で評価を行えるよう、評価者研修を行うなどの対策を行いましょう!

⑥制度運用は定期的に見直す

人事評価制度は、運用開始から同じものを継続して使用するのではなく、環境や医院内の変化に合わせて、変更・改善しましょう。

制度運用を見直す際に参考にしていただきたい評価手法やマネジメント手法をご紹介します!
自院に合った手法を取り入れてください。

目標管理制度(MBO)

スタッフ自身が自分で個人目標を設定し、進捗状況や達成度に応じて評価を行う手法です。
個人目標は、必ずスタッフ本人により決めてもらうことになります。
また、個人目標は自院の組織目標と連動させる必要があります。

📝メリット
● スタッフの自律性を養う
● スタッフのスキル開発につながる
● スタッフのモチベーションアップにつながる

OKR

目標を設定し、目標達成するために具体的にどのようなことをすればよいのかを明確にする目標管理方法です。

📝メリット
● スタッフと自院の方向性を一体にできる
● 目標が明確になる
● 自院内のコミュニケーションが活性化する
● スタッフのモチベーションアップにつながる

360度評価

評価者1名だけでなく、同僚や後輩などさまざまな立場の人が評価者となり、1人のスタッフを多方面から評価をする手法です。
仕事上で関わる複数名で評価を行うことで、多角的に公平に評価ができます。

📝メリット
● 客観的に評価できる
● 評価を受けるスタッフの納得感が高い
● 複数人のフィードバックから自分の改善点を発見できる

コンピテンシー評価

成果を出しているスタッフの行動特性(コンピテンシー)を元に、評価項目を設定して評価する方法です。

📝メリット
● 公平性のある評価ができる
● 成果を重視することで若手社員のモチベーションも保ちやすい
● 効率的な人材育成ができる

バリュー評価

医院の方針や理念に基づいて評価項目を設定し、評価する方法です。

📝メリット
● 理念や方針を効率的に共有することで、組織力が高まる
● 離職率を下げることができる
● スタッフが自発的に考え行動する意識が高まる

1on1ミーティング

1対1で定期的に対話を行う面談を、1on1ミーティングといいます。
評価者と評価を受けるスタッフとのコミュニケーションのために、1on1ミーティングの導入がおすすめです。

📝メリット
● 自分の成長と課題を客観的に捉えることができる
● 評価者が評価を受けるスタッフの状況を把握できる
● 信頼関係を構築し、評価の納得感が高まる

スタッフが納得する評価制度を実現

人事評価が低くスタッフから不満の声が上がる場合、さまざまな要因がありますが、なるべく早期に解決して スタッフの不満を軽減し、本来の目的に向けて人事評価制度を運用したいですよね。
ぜひ、この記事を参考にしていただければ幸いです。

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