2024年7月25日に開催された「中央最低賃金審議会」において、最低賃金の引き上げ額の目安が発表されました。
最低賃金の引き上げは、労働者の生活保障と経済の活性化を目的とした重要な政策です。
労働者側から見れば給与が上がるため嬉しい政策になりますが、経営者である院長先生にとっては難しい政策になります。
最低賃金引き上げの概要
2024年度の最低賃金引き上げについて詳しい内容は以下のとおりです。
都道府県名 | 最低賃金時間額 | 発効年月日 |
北海道 | 1,010 | 令和6年10月1日 |
青森 | 953 | 令和6年10月5日 |
岩手 | ||
宮城 | 973 | 令和6年10月1日 |
秋田 | 951 | 令和6年10月1日 |
山形 | 955 | 令和6年10月19日 |
福島 | 955 | 令和6年10月5日 |
茨城 | 1,005 | 令和6年10月1日 |
栃木 | 1,004 | 令和6年10月1日 |
群馬 | 985 | 令和6年10月4日 |
埼玉 | 1,078 | 令和6年10月1日 |
千葉 | 1,074 | 令和6年10月1日 |
東京 | 1,163 | 令和6年10月1日 |
神奈川 | 1,162 | 令和6年10月1日 |
新潟 | 985 | 令和6年10月1日 |
富山 | 998 | 令和6年10月1日 |
石川 | 984 | 令和6年10月5日 |
福井 | 984 | 令和6年10月5日 |
山梨 | 988 | 令和6年10月1日 |
長野 | 988 | 令和6年10月1日 |
岐阜 | 1,001 | 令和6年10月1日 |
静岡 | 1,034 | 令和6年10月1日 |
愛知 | 1,077 | 令和6年10月1日 |
三重 | 1,023 | 令和6年10月1日 |
滋賀 | 1,017 | 令和6年10月1日 |
京都 | 1,058 | 令和6年10月1日 |
大阪 | 1,114 | 令和6年10月1日 |
兵庫 | 1,052 | 令和6年10月1日 |
奈良 | 986 | 令和6年10月1日 |
和歌山 | 980 | 令和6年10月1日 |
鳥取 | 957 | 令和6年10月5日 |
島根 | 962 | 令和6年10月12日 |
岡山 | 982 | 令和6年10月2日 |
広島 | 1,020 | 令和6年10月1日 |
山口 | 979 | 令和6年10月1日 |
徳島 | ||
香川 | 970 | 令和6年10月2日 |
愛媛 | 956 | 令和6年10月13日 |
高知 | 952 | 令和6年10月9日 |
福岡 | 992 | 令和6年10月5日 |
佐賀 | 956 | 令和6年10月17日 |
長崎 | 953 | 令和6年10月12日 |
熊本 | 952 | 令和6年10月5日 |
大分 | 954 | 令和6年10月5日 |
宮﨑 | 952 | 令和6年10月5日 |
鹿児島 | 953 | 令和6年10月5日 |
沖縄 | 952 | 令和6年10月9日 |
中央最低賃金審議会は、2024年度の地域別最低賃金額改定について47都道府県で一律50円を引き上げ、全国で平均1054円とする目安を示しました。
これは過去最高の引き上げ額であり、引き上げ率に換算すると5.0%にものぼります。
さらに27県の地方最低賃金審議会では、目安を上回る51~84円を引き上げる答申が出ました。
主に東北地方や四国地方、九州地方を中心に目安額を上回る引き上げを発表しています。
最低賃金はどうやって決まっている?
最低賃金は最低賃金審議会で、賃金の実態調査結果などを参考にしながら審議され、
- 労働者の生計費
- 労働者の賃金
- 通常の事業の賃金支払い能力
を考慮して毎年改定されています。
最低賃金には産業や職種にかかわりなく各都道府県内の事業場で働くすべての労働者とその使用者に対して適用される「地域別最低賃金」と、関係労使が基幹的労働者を対象として、地域別最低賃金よりも金額水準の高い最低賃金を定めることが必要と認める産業について設定される「特定(産業別)最低賃金」があります。
1978年度から地域別最低賃金の整合性を図るため、中央最低賃金審議会が毎年地域別の目安を作り、地方最低賃金審議会へ提示しています。
https://saiteichingin.mhlw.go.jp/
厚生労働省:最低賃金制度サイト
最低賃金引き上げの影響
最低賃金の引き上げは、多くの労働者・企業に大きな影響を及ぼします。
労働者への影響
- 収入の増加:労働者の収入が増加し、生活水準の向上が期待できます。
- 労働意欲の向上:賃金の水準を上げることで、労働者のモチベーション向上につながる可能性があります。
- 消費の活性化:収入の増加により、個人消費が活性化する可能性があります。
一方で、以下のような懸念点もあります。
- 労働時間の削減:企業が人件費を抑えるために労働時間を削減する可能性があります。
また、同じく2024年10月から社会保険の適用枠が拡大するため、扶養内で働く労働者の方にも大きく影響する場合があります。 - 雇用機会の減少:一部の企業が人員削減や新規採用を控える可能性があります。
企業への影響
- 人件費の増加:特に労働集約型産業では、大きく負担が増えてしまう可能性があります。
労働集約型産業…事業活動の多くを人間の労働力に頼っている産業。売上高に対する人件費の割合が高くなる。 - 価格への転嫁:人件費の増加分を商品・サービスの価格に反映させる企業も出てくるかもしれません。
- 生産性向上の取り組み:人件費増加を吸収するため、業務効率化や自動化への投資が進むことがあります。
- 採用・人材確保:賃金水準が上がることで、優秀な人材が採用しやすくなることも。
中小企業や特定の産業では、これらの影響がより大きくなる可能性があります。
企業がとるべき対応は?
10月からの最低賃金引き上げに向けて、企業は以下のような対応を検討する必要があります。
- 募集要項の見直し
- 最低賃金を下回るスタッフや求人票の見直し
- 全体的な賃金バランスの調整
- 業務効率化・生産性向上
- 業務プロセスの見直し
- サービス導入による効率化
- スタッフ育成・スキルアップ
- スタッフのスキルアップによる付加価値の創出
- 技術向上によるリピート率の上昇
既存のスタッフの給与の見直しだけではなく、すでにハローワークなどの求人媒体に出している募集要項もチェックが必要です!
そのままにしていると募集要項の掲載が止まってしまうだけではなく、求職者に悪い印象で見られてしまう可能性があります。
賃金の見直しについて
スタッフの給与や募集要項の給与を見直す時に「どうやって給与を決めればいいかわからない…」と思われる先生もいらっしゃるかもしれません。
給与を決める時にまず大切なのは
「このスタッフはどんなスキル・技術を持っているか?」
「どんなスキル・技術を持った求職者を採用したいか?」
を明確にすることです。
医院の業務について、どんなことを担当してもらいたいかで支払える給与が異なるはずです。
スキル・技術をもとに給与を見直すことで、適切な賃金設定を行うことができます。
また、求職者側も求められている業務内容と給与がわかりやすくなるので、特に経験者は応募しやすくなります。
給与設定に悩まれている先生は、まず必要なスキル・技術を洗い出してみてください。
全ての都道府県で大幅引き上げになった理由
2024年度の地域別最低賃金額の目安が、全ての都道府県で一律50円以上の引き上げになった理由は、都道府県間における格差が縮小傾向にあることと、政府が地域格差の是正に意識を向けていることが挙げられます。
2023年度も目安額を超える賃金の引き上げを行なった県があったものの、引き上げ額は39円〜47円でした。
これを見ると、今年度もかなりの増額になったと考えられます。
今後も地域格差をなくすために大幅な賃金引き上げになる可能性があります。
賃金の見直しはまずスキルの洗い出しから行いましょう!
いかがでしたでしょうか? 最低賃金の引き上げは毎年必ず実施されるので、院長先生はこの時期は特に悩まれていることと思います。
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