歯科医院がフレックスタイム制を導入するのって難しい?福利厚生の充実や働き方改革のために!

働き方改革

歯科医院の中でも歯科衛生士は、生涯働ける国家資格のため人気の職業です。

全国の歯科医院約6万7千医院(2022年度時点)の内、就業中の歯科衛生士は約14.5万人(2022年度時点)となっており、1つの医院で働く歯科衛生士の平均は2.5人と売り手市場となっていて現状確保が難しくなっています。

資格は持っているのに働いていない歯科衛生士も、現役衛生士と同じ約15.5万人(2022年度時点)存在しているため、歯科業界から離れている歯科衛生士の掘り起こしのためには、ライフスタイルによって時短勤務を可能とするような労働時間制度の導入は大切です。

また、近年の働き方改革により、歯科医院でも労働環境の整備が必須です。
働くスタッフの為にお金をかけずに何かできる福利厚生はないのか?と模索中の先生も多いのでは?

本記事では、労働時間制度の中でもフレックスタイムについての導入方法や、メリットデメリットについて解説していきます。

  1. 歯科医院における働き方改革とは?
  2. フレックスタイム制とは?
    1. フレックスタイム制におけるコアタイム
    2. フレックスタイム制におけるフレキシブルタイム
    3. 歯科医院がフレックスタイム制度を導入した場合の例
    4. フレックスタイム制における清算期間
    5. スーパーフレックス制度
  3. フレックスタイム制を導入するメリット
    1. 歯科医院側のメリット
      1. 優秀な人材の確保できること
      2. 退職者が削減すること
      3. 残業代の削減が図れること
      4. 業務の効率化が図れること
      5. 採用に有利に働くこと
    2. スタッフ側のメリット
      1. モチベーションアップにつながること
      2. ワークライフバランスの向上が図れること
  4. フレックスタイム制を導入するデメリット
    1. 歯科医院側のデメリット
      1. 診察時間中にスタッフが少ない時間帯が発生する可能性があること
      2. 診療時間が決まっているため、長い時間帯のフレキシブルタイムの設定ができない
      3. 労働時間の管理が複雑になること
    2. スタッフ側のデメリット
      1. 他のスタッフとのコミュニケーションが難しいこと
      2. 出勤していないスタッフの業務をしなければならないこと
  5. フレックスタイム制の導入方法
    1. 労使協定の締結
    2. 就業規則への規定
    3. 歯科医院がフレックスタイム制を導入するのは難しい?
  6. まとめ
    1. ♦︎この記事の監修者
      1. ♢ 小島 章彦 (こじま あきひこ)

歯科医院における働き方改革とは?

歯科医院における歯科衛生士などのスタッフの労働時間も、働き方改革により変化してきています。

歯科衛生士として働いている方のほとんどが女性のため、結婚、出産、育児などのライフイベントにより退職や転職をする方が多いのが現実です。

このような退職や転職による人手不足の改善のためにも、働き方改革により柔軟な働き方ができるように変えていく必要があるのです。

歯科医院でできる働き方改革は、例えば診療の開始時間と終了時間を早くすることや、土日祝日を休みにするなどの対策が考えられます。

また、歯科衛生士などのスタッフが、ライフスタイルに合わせたある程度自由な働き方ができる方法として、フレックスタイム制の導入があります。

フレックスタイム制とは?

フレックスタイム制とは、決められた一定期間(清算期間)の総労働時間の範囲内で、スタッフが自分で始業時間、終業時刻、労働時間を決定できる制度のことです。

フレックスタイム制を導入することにより、スタッフがプライベートと仕事を両立させて柔軟な働き方ができるようになります。

フレックスタイム制を導入することで、子育て中でフルタイムの勤務ができない歯科衛生士の方や、歯科医院勤務にブランクがある歯科衛生士の方がより働きやすくなります。

フレックスタイム制におけるコアタイム

フレックスタイム制は、1日のうちでいつ出勤してもよい時間帯と必ず勤務しなければならない時間帯に分けられるのが一般的です。

フレックスタイム制の中で、この必ず勤務しなければならない時間帯のことをコアタイムといいます。

コアタイムは、必ずしも定めなければならないものではなく、コアタイムが決まっていないフレックスタイム制もあります。

フレックスタイム制におけるフレキシブルタイム

フレキシブルタイムとは、フレックスタイム制の中でスタッフが自分で労働時間を決められる時間帯のことです。

フレキシブルタイムもコアタイムと同様に、必ず定めなければならないものではありません。

また、勤務中であってもフレキシブルタイムの時間帯であれば、途中で中抜けすることもできます。

歯科医院がフレックスタイム制度を導入した場合の例

以下は、歯科医院でフレックスタイム制を導入した場合の例です。

始業時刻について、フレキシブルタイムを午前7時から午前10時までに設定します。

始業時刻についてスタッフが自分で労働時間を決められるフレキシブルタイムを設定することにより、保育園に子どもを送っていくなどのライフスタイルに沿って出勤することができます。

午前10時から午後3時まで(正午から午後1時までの休憩時間を除く)の間は、コアタイムとして設定します。

終業時刻について、フレキシブルタイムを午後3時から午後7時までの間に設定します。

終業時刻についてもスタッフが自分で労働時間を決められるフレキシブルタイムを設定することにより、ライフスタイルに沿って退社することができます。

フレックスタイム制における清算期間

フレックスタイム制における清算期間とは、スタッフが自由に労働すべき時間を決められる期間のことで、最長3か月まで設定することができます。

フレックスタイム制では、この清算期間における総労働時間を設定しなければなりません。

清算期間における総労働時間は、清算期間における法定労働時間の総枠(1週間の法定労働時間×清算期間の暦日数÷7日)を超えてはなりません。

スーパーフレックス制度

フレックスタイム制では、コアタイムやフレキシブルタイムは必ずしも設定しなければならないものではありません。

コアタイムが設定されていなければ、スタッフが始業時刻、終業時刻、労働時間のすべての時間を自由に決められるのです。

このようなコアタイムが設定されていない状態のフレックスタイム制のことを、スーパーフレックス制といいます。

フレックスタイム制を導入するメリット

歯科医院がフレックスタイム制を導入することで、歯科医院側とスタッフ側の両方にメリットがあります。

ここでは、フレックスタイム制を導入するメリットについて解説していきます。

歯科医院側のメリット

歯科医院側のメリットは、以下になります。

優秀な人材の確保できること

子育てなどのため通常の勤務時間では働けない歯科衛生士であっても、フレックスタイム制の導入によりライフスタイルに沿った勤務が可能です。

そのため、通常の勤務時間では働けない優秀な人材を確保できるのです。

退職者が削減すること

フレックスタイム制などのスタッフにとって働きやすい職場の構築は、退職者を削減することができます。

残業代の削減が図れること

フレックスタイム制による残業代の算出は、通常勤務とは異なり日毎での算出ではなく、清算期間における法定労働時間の総枠を超えた時間が残業代になります。

そのため、スタッフ全体の残業代の削減を図ることができるのです。

業務の効率化が図れること

スタッフの都合に合わせて働きたい時間に勤務できることで、業務の効率化を図ることができます。

採用に有利に働くこと

歯科衛生士などの売り手市場の人材を採用するには、フレックスタイム制などの福利厚生や、働き方改革の充実が有利に働きます。

スタッフ側のメリット

スタッフ側のメリットは、以下になります。

モチベーションアップにつながること

フレキシブルタイムの有効活用により、仕事とプライベートの両立がしやすくなり、スタッフのモチベーションアップが図れます。

ワークライフバランスの向上が図れること

フレックスタイム制の導入により、ワークライフバランスの向上が図れます。

例えば、保育園の送迎や家事に支障が出ないことや、介護に対して融通が効くことや、夜間学校に通えるようになるなどです。

また、出勤時間をずらして病院に通院することもできます。

フレックスタイム制を導入するデメリット

歯科医院にフレックスタイム制を導入することは、メリットだけではありません。

ここでは、歯科医院にフレックスタイム制を導入するデメリットについて解説していきます。

歯科医院側のデメリット

歯科医院側のデメリットは、以下になります。

診察時間中にスタッフが少ない時間帯が発生する可能性があること

フレキシブルタイムが診察時間中に設定されている場合には、その時間帯はスタッフが自由に出勤できるため、スタッフが不在になる可能性があります。

診療時間が決まっているため、長い時間帯のフレキシブルタイムの設定ができない

診察時間にスタッフが不在にならないためには、フレキシブルタイムを短くする必要があります。

フレキシブルタイムが短い時間の場合、スタッフが受けるメリットは少なくなります。

労働時間の管理が複雑になること

フレックスタイム制の導入は、スタッフ一人ひとりの労働時間が異なるため、労働時間の管理が複雑になります。

そのため、労務管理の担当者の負担が増えることがデメリットです。

スタッフ側のデメリット

スタッフ側のデメリットは、以下になります。

他のスタッフとのコミュニケーションが難しいこと

フレックスタイム制の導入により、他のスタッフとの勤務時間にズレが生じます。

そのため、他のスタッフとのコミュニケーションが難しいことが、デメリットです。

出勤していないスタッフの業務をしなければならないこと

フレキシブルタイムの時間帯であればいつ出勤しても問題ないため、出勤していないスタッフがいることが多いです。

そのため、出勤していないスタッフの業務の代わりをしなければならないことがあります。

フレックスタイム制の導入方法

フレックスタイム制を導入するためには、手続きが必要です。 

ここでは、フレックスタイム制の導入方法について解説していきます。

労使協定の締結

フレックスタイム制を導入する場合は、対象の労働者の範囲、清算期間における総労働時間などを定めた労使協定を締結する必要があります。

労使協定とは、院長などの使用者とスタッフなどの労働者が書面で締結する協定のことです。

就業規則への規定

フレックスタイム制を導入する場合には、就業規則などに始業時刻や終業時刻の決定をスタッフの決定に委ねることを定めなければなりません。

また、コアタイムやフレキシブルタイムを設定する場合は、時間帯についても規定する必要があります。

歯科医院がフレックスタイム制を導入するのは難しい?

一般的に歯科医院は、診療の開始時間と終了時間が決まっているため、フレックスタイム制の導入は慎重に検討する必要があります。

歯科医院がフレックスタイム制を導入するには、フレキシブルタイムの時間帯にスタッフが不在にならないように考慮することが必要です。

歯科衛生士の業務はアポイント制が主な業務のため、フレキシブルタイムの時間帯に不在にならないような考慮はしやすいかもしれません。

診察時間にスタッフが不在にならないように、まずはお試しでコアタイム7時間からはじめてみてもよいかもしれませんよ!

フルタイム勤務の子育て中の私たちにとって、朝の1時間は他の2時間にも匹敵するから助かる!

まとめ

フレックスタイム制の導入は、歯科業界から離れている歯科衛生士の掘り起こしや、日によって時短勤務のような働き方をしたい求職者にとってはとても魅力的なものです。

フレックスタイム制は、多種多様なライフスタイル、ステージに対応するひとつの選択肢であり、今は抵抗がある先生にとってもこれからの時代はスタンダードになる可能性があります。

整えた福利厚生や働き方改革は、求職者へしっかりPRすることが大切です。

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♦︎この記事の監修者

監修者 道坂まや先生

♢ 小島 章彦 (こじま あきひこ)

社会保険労務士
信用金庫に8年、システム開発の会社に現在まで20年以上勤務。
社会保険労務士・行政書士の資格を保有し、人事労務関係、社会保険関係の記事を中心に7年以上執筆活動を続けている。最近では、労務関係の記事の監修作業も行っている。

2001年 社会保険労務士資格取得
2002年 行政書士資格取得
2017年~ 社会保険労務士や行政書士の資格を生かして法律系webライターとして、社会保険、労務関係、その他の法律などを中心に執筆活動をしている。
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