なるほど!デンタル人事編集部の松村・田代です。
近年、衛生士不足はどの医院も抱える問題であるほど深刻です。
衛生士は生涯働ける国家資格であり、人気の職業ですが求人倍率20.7倍と最も人手不足が深刻な業界とも言えます。
この記事を読んでいる院長先生も、衛生士の確保に頭を悩ませているのではないでしょうか?
ここでは、衛生士の抱えるリアルと共に新しい働き方を学び、自院の採用に役立つ情報をお伝えしていきます。
歯科衛生士の新しい働き方とは?
非常勤の衛生士が急増中
現在、歯科衛生士として活躍される方の半数近くは非常勤として働いています。
これは歯科医院の増加も一因とされていますが、歯科衛生士のほとんどが女性であることが大きく関係しています。
女性の場合、結婚・出産・育児といったライフイベントを機に退職・転職する人も多いため慢性的な人手不足になっています。
非常勤として働く働き方は以下の2パターンです。
①パート
ワークライフバランス実現のためパートとして働くことで、仕事と家庭や育児、介護等を両立しています。
またこの中には、歯科衛生士の資格を持ちながら衛生士以外のパート・アルバイトをして働く女性も増えています。
しかし、このように資格を持っているけれど歯科衛生士以外のお仕事をしている方は、歯科衛生士として働きたくないわけではありません。
- 「午前中だけの勤務であれば働きたい…」
- 「保育園のお迎えがあるから、17時まで働きたい…」
- 「旦那に育児を任せられる、夜診だけ働きたい…」
このように、時間の融通がきけば働きたいと考えている方が多いものです。
しかし歯科衛生士はそうはいきませんよね。朝10時から治療の予約が入っていれば、1時間前の9時ごろに出勤し診療室内の準備、治療の準備、自分のタイムスケジュール確認、ミーティング…と忙しい歯科衛生士もいるでしょう。
特に歯科衛生士の人数が少なかったり歯科助手がいなかったりする歯科医院では、TBIやクリーニングなど自分の予約に集中できないことがほとんどです。
例えば自分の予約をこなしながら歯科医師の診療補助を行い、隙間時間を見て受付、器材の洗浄・滅菌…などと業務に追われることも。 このような歯科医院では、毎日診療開始時間よりもかなり早く出勤し、診療終了時間よりも遅く退勤というリズムになりやすいです。
加えて人手不足の歯科医院ではお昼休憩もまともに取れない…なんてことも。見た目上は休憩時間2時間となっていても、午前中の診療が長引いて実際は1時間も取れないという場合も見受けられます。
歯科衛生士数が多ければ交代で休憩を取ったり、診療が長引いた分休憩時間を延ばしたりすることもできますが、スタッフ数が少ないとそのような臨機応変な働き方はできません。
②フリーランス
歯科衛生士のフリーランスってご存知ですか?
一つの医院で勤務するだけではなく、衛生士向けのセミナー講師や専門学校の非常勤講師など多様な働き方をするフリーランスの歯科衛生士が増えています。
ライフイベントや人間関係、雇用条件に縛られず自由な働き方ができるとして注目を集めています。
衛生士がフリーランスとして独立するためには、特別な条件や資格はありません。
フリーランスとして開業し仕事を請け負うためには、ある程度の実績や経験が必要なので数年間の勤務実績を作る必要があります。
既にフリーランスとして活躍する衛生士の事例もあるので今後はさらに増えていく働き方なのではないでしょうか。
また、開業せずともフリーランスとして月に数日だけ勤務するといった働き方をする衛生士も存在します。
活躍の場の多様化
常勤・非常勤の衛生士の中で着目すべき違いに活躍の場の多様化が挙げられます。
常勤の衛生士が医院・診療所といった「職場」に関心があるのに対し、非常勤の場合「在宅歯科医療」「介護施設」「障がい者歯科」といった「業務対象」に興味を持っています。
非常勤歯科衛生士の多くが「誰のために働くのか(業務の対象)」への関心が高まっているのです。
ダブルライセンス
プラスαの資格を取得してキャリアアップを目指している衛生士が増えています。
歯科衛生士の資格と歯科技工士の資格を持つ「ダブルライセンス」といった人や、日本歯周病学会認定歯科衛生士など、さまざまな歯科衛生士が取れる認定資格を取得し、フリーランスとして独立する際の武器になっています。
あなたの歯科医院でもできる!働き方改革4選
柔軟な働き方を実現するために
改革1.診療時間の短縮・変更
よく取り入れられているのは、診療終了時刻の30分〜1時間程度の繰り上げです。
中には、スタッフの休憩時間を交代制にすることで診療の休み時間を短縮し、診療終了時間を早めた医院もあります。
診療時間の短縮・変更のメリット
実際に診療時間の短縮・変更を実施した医院では次のような傾向が見られています。
- スタッフの疲労が軽減された
- 仕事にメリハリがつき、患者様へのサービスの質が向上した
- 待ち時間が減った
- キャンセル率や中断率が低くなった
また求職者の視点から見ても、育児中のママさん求職者が子どもを遅くまで預けられる保育園を探す必要がなくなったり、「労働時間・給与・立地」を重視する傾向にある新卒衛生士が仕事とプライベートを両立するイメージがしやすくなったりするなどの利点があります。
診療時間を短縮したあとの売上減少が心配な場合は、作業のDX化など、生産性の向上に向けた対策も併せて実施しましょう。
改革2.土日休み
特にオフィスビルなどで開院している歯科医院の場合は、土曜日や日曜日は患者様が少ないことを見越して休みにしているところが増えています。
大学病院や総合病院、企業内の歯科医院も同様です。
土曜日の診療を午前中のみにしたり、土曜日に診療しても交代で出勤したりといった形態を取ることもあります。
土日休みのメリット
- 連休を活かして旅行へ行ったり、思い切り休むことができる
- 他業界の友人や家族と予定を合わせやすくなる
もし、土曜日も来院される患者様が多いから休みにできない場合は「月に2回程度の土日休みならOK」のように条件を少し変えるだけでも、求職者の選択肢に入りやすくなります。
スキルアップ・キャリアアップできる環境を整えるために
改革3.セミナー参加や資格取得の支援
実際にスタッフのスキルアップ・キャリアアップ支援を行っている医院は、具体的に以下のような制度や工夫をしています。
支援の具体例
- 外部セミナーへの参加費用補助(受講代、交通費、食事代など)
- 知り合いの歯科医師や衛生士を招待して、院内勉強会を開催する
- 勤務中の決まった時間に、練習時間を確保する
- 資格に応じた手当の支給
まずは、今いる歯科衛生士に学びたい分野をヒアリングしてみましょう。
改革4.掛け持ち勤務OK
現在勤めている医院にはない専門分野で経験を積みたいと考えている歯科衛生士にとってメリットが大きい働き方です。
常勤の衛生士でも、休みの日や午前診療などで早く終わる曜日にパートとして別の医院や施設で勤務することができます。
他の現場で得た知識や技術が、患者様に対するサービス向上や新しい分野への発展にも繋がるので医院自体にもメリットがあります。
定期的なコミュニケーションで、あなたの医院に合った働き方改革を始めよう!
あなたの医院にマッチした働き方改革を行うためには、あなたの医院で働く衛生士が職場に求めているものを明確にする必要があります。
ぜひ、定期的に面談を行い、要望や不満を聞く機会を設けましょう。
今いるスタッフが活き活きと働ける職場は、現在求職中の衛生士や、もう一度衛生士として働きたいと考えている人にも間違いなく魅力的に見えますよ!