この記事では、歯科衛生士の人手不足に関するデータと、人手不足を打開する施策をご紹介します。
✔️ 歯科衛生士の有効求人倍率は23.7倍。1人の衛生士を約24院が取り合う状況で、「待っていれば来る」時代はすでに終わっている。
✔️ 人手不足の原因はライフイベント・人間関係・待遇・キャリア不足など複合的で、どれか一つを解決するだけでは根本的な改善にならない。
✔️ 採用がうまくいく医院は「どんな人材が欲しいか」を言語化し、求職者の欲求に応える情報を正直に伝えている。
✔️ 定着率を上げるには採用時のミスマッチ防止と、入職後の教育・評価・職場環境づくりをセットで整えることが不可欠。
⇒「DHから応募が集まる求人の作り方セミナー」
歯科医院の人手不足はなぜ深刻化しているのか
有効求人倍率は23.7倍!
「有効求人倍率」とは、求職者1人に対してどれくらいの求人があるかを示す数値です。
歯科衛生士の求人倍率は他職種に比べても非常に高く、新卒学生の求人においては23.7倍というデータもあります。
つまり、歯科衛生士1人を約24院が取り合っている状況にあるのです。これでは、どの医院も思うように採用が進まないのは当然です。

需要に対して供給が圧倒的に不足している
問題は求人倍率の高さだけではありません。そもそも「現場で働ける歯科衛生士の数」が、需要に比べて大きく不足しています。
令和6年度の厚生労働省の報告によると、2024年末時点で実際に働いている歯科衛生士は149,579人。
いっぽうで、同じく令和6年時点における歯科衛生士の免許登録者数は321,241人。
つまり、現場で働いているのは登録者数のうち約 46.6%にとどまっており、資格はあっても働いていない「潜在歯科衛生士」が多いことが原因の一つとされています。
- 資格保有者数:321,241人
- 就業者数:149,579人
- 就業率:46.6%(実際に働いている人の割合)
求人は山ほどあるのに働ける人が少ない――この「需要と供給のギャップ」こそが、歯科医院における採用難の最大要因です。
参考:厚生労働省「衛生行政報告例〔就業医療関係者〕の概況」(2025年7月)
入学定員に対する入学率も下がっている
養成校の数は増え続けているにもかかわらず、入学者数は減少傾向が続いています。つまり、「学校の器」は広がっているのに、そこに入ってくる学生が追いついていない状態です。
歯科衛生士を目指す人口そのものが減っているという現実は、採用競争がこれからさらに激しくなることを意味しています。

人手不足が医院経営に与える影響
診療枠縮小や売上減少リスク
歯科衛生士や助手が不足すると、患者の受け入れ枠を減らさざるを得ない状況が生まれます。
たとえば予防処置やメンテナンスを任せられる衛生士がいないと、院長自身が処置に時間を割く必要が出てきます。その結果、自由診療や新規患者への対応が後回しになり、売上の機会損失につながります。
既存スタッフの負担増と離職連鎖
人が足りない分のしわ寄せは、必然的に既存スタッフへ集中します。
残業や休日出勤が増えると、心身の負担からモチベーション低下や不満が強まり、さらに退職者が出る悪循環を招きやすくなります。
特に歯科衛生士は全国的に転職先を選びやすいため、負担が大きい職場では「もっと条件の良い医院へ移ろう」と考えやすいのです。
患者満足度・医院ブランドの低下
人手不足が続くと、患者への対応品質にも影響します。
☑️ 待ち時間が長い
☑️ 説明やカウンセリングの時間が減る
☑️ スタッフの表情や雰囲気に余裕がない
こうした小さな積み重ねが、患者満足度の低下につながります。
さらに「人手が足りなくてバタバタしている医院」という評判が広まれば、地域でのブランドイメージも損なわれ、新患獲得にも影響が出ます。

よくある「人手不足の原因」とは
原因1. ライフイベント(結婚・出産・育児)による離職
歯科衛生士は20〜30代女性が多いため、結婚・出産・育児といったライフイベントが離職理由として大きな割合を占めます。
「出産・育児」を理由に就業していない人が20.6%にのぼるというデータも。
復職を希望しても制度が整っていなければ難しく、そのまま職場を離れてしまうケースも目立ちます。
原因2. 人間関係や職場環境の不一致
転職理由の中で常に上位に挙がるのが「人間関係」です。ある調査でも退職理由の27%が人間関係に関するものでした。
原因3. 待遇・労働条件への不満
給与や労働時間の不満も根強い課題です。
厚生労働省の統計によると、歯科衛生士の平均年収は約405万円で、全産業平均や看護師と比べても低い水準です。さらに、小規模医院では評価制度が院長の主観に依存しやすく、「何を達成すれば昇給できるのか」が不透明な点も離職を招きます。
原因4. 教育体制・キャリア形成の不足
「教育不足」も若手が早期に辞めてしまう大きな理由です。新人研修やOJTの仕組みが不十分だと、経験の浅い衛生士は「きつい」「ここで働いても思うように成長できない」と思われることも。
また、将来的なキャリアパスを示せない職場では「この先の成長が見えない」と思われ、歯科衛生士は転職を考えてしまいます。

上記で挙げた要因が複雑にいくつも重なり、結果的に離職につながります。
しかも、歯科衛生士は引く手数多。
その医院で働くメリットが少なければ「探せば今より良い職場がすぐ見つかる」と、転職を考えやすい状況にあるのです。
そのまま対策を取らずに放置すると、離職が次々と連鎖し、医院の人手不足はさらに深刻化してしまいます。
定着率を高めるためにできる取り組み
採用した歯科衛生士に長く働いてもらうには、働きやすい環境を整えることが必要不可欠。
せっかく採用に成功しても、数か月や数年で辞めてしまえば採用コストも教育コストも水の泡です。
ここでは、定着率を高めるために医院が取り組める具体策を4つご紹介します。
柔軟なシフト制度や休暇ルールを設ける
歯科衛生士は20〜30代女性が多いため、結婚・出産・育児といったライフイベントと仕事の両立が課題になりがちです。
特に、ママさん衛生士は『子育てに理解があるか』『急なお休みも柔軟に対応してもらえるか』が、転職先を選ぶ上でかなり重要な基準となっています。

新人研修・キャリアパス設計
特に若手衛生士の早期離職の背景には「教育不足」があります。
入職後すぐに即戦力を求められると、経験が浅い衛生士ほど不安を抱きやすく、退職リスクが高まります。
そこで重要なのが、『何ヶ月後・何年後に、何ができるようになるのか / 何を目指せるのか』というキャリアパスを明示すること。
「半年後には一人で予防処置を担当」「3年で認定資格を取得」といったステップを示すことで、本人が未来を描きやすくなり、医院への定着意欲が高まります。
公平で納得感のある評価・給与制度
給与や待遇への不満も離職を引き起こす大きな要因です。
歯科衛生士の平均年収は全産業平均や看護師と比べて低い水準にあり、評価制度が不透明だと「頑張っても報われない」と感じてしまいます。
「どんな行動や成果で評価されるのか」を明確にし、スキルアップに応じて給与や役割がきちんと上がる仕組みを整えることが必要です。
歯科医院の人事評価についてはこちらに詳しく記載しています。
※【歯科院長向け】1週間で4名のDHから応募が来た求人の作り方を解説
⇒「DHから応募が集まる求人の作り方セミナー」
人手不足を生まないために必要な“採用”の見直し
歯科医院の人手不足は、ただ「今いる人を辞めさせない」だけでは解決できません。
根本的に、採用時点で“ミスマッチを防止し、長く勤める人材を採用すること"が欠かせないのです。
「とりあえず人が欲しい」と妥協した採用をすると、すぐに辞めてしまい、また求人再開…という悪循環となってしいます。
見直し1)まず「どんな人材が欲しいのか」を言語化する
人材不足に悩む医院ほど、つい「誰でもいいから来てほしい」と考えてしまいがちです。
しかし、その結果「価値観が合わずすぐ退職」という事態を招き、人手不足はかえって深刻化します。
だからこそ、採用の第一歩は 「求める人物像を具体的に言語化すること」 です。
例えば、次のような観点で整理してみましょう。
- 経験レベル:新卒を育てたいのか、それとも即戦力が必要なのか
- 重視する特性:協調性を優先するのか、技術力を重視するのか
- 条件の区分:必須条件(資格・勤務形態)と歓迎条件(性格・キャリア志向)を分けておく
思いつかない場合は、今働いているスタッフさんの中で「最も活躍している人材」を例に考えてみてください。
その方は『何が得意だから / 何が出来ているから』活躍できていると感じるのでしょうか?
これを考えることで、「逆にこの条件は不要だな」というポイントも見え、『絶対に譲れない条件 / 妥協できるポイント』が明確化されます。
見直し2) 医院の理念や文化を言語化する
どれだけ臨床スキルの高い人材でも、医院の理念や文化に共感できなければ長くは続きません。
反対に「この医院の考えに共感したから働きたい」と思って入職した人は、多少の条件の違いがあっても定着しやすいのです。
理念や文化は スタッフをつなぎとめる“接着剤” のような役割を持っています。
だからこそ、求人票や採用サイトには次のような情報を具体的に盛り込みましょう。
- 医院の方針:「当院は予防歯科に力を入れています。患者さん一人ひとりに担当衛生士をつけ、長期的に口腔管理を行っています」
- 院長の考え:「スタッフが安心して働けることが、良い診療の第一歩。だから勤務時間や休暇制度には特に配慮しています」
- 大切にしている価値観:「チームワークを最優先にし、ミスを責めるのではなく改善策を一緒に考える文化があります」
抽象的な言葉ではなく、「なぜそうしているのか」「どんな場面で表れているのか」といった背景や具体例まで伝えると、求職者は自分の価値観と照らし合わせやすくなります。
見直し3)求職者の“欲求”に応える募集要項をつくる
次はこれまで言語化した内容を踏まえ、募集要項を作っていきます。
ここでポイントとなるのは、『(見直し1で考えた)ターゲットが求める欲求を満たす募集要項になっているか』。
そもそも人は、
- もっと学びたい(スキルアップできる環境か)
- 子育てと両立したい(休みが取りやすいか)
- 安心して働きたい(人間関係や雰囲気はどうか)
といった「自分の欲求を満たしたい」という希望があって転職します。
前の医院を辞めたのも、「ここでは自分のやりたいことがやれない / 希望する働き方ができない」という風に、欲求が満たせなかったから。
転職活動時にはもちろん、『その欲求を満たせる医院か』を基準に医院を選ぶでしょう。
だからこそ、募集要項には 応募者の欲求を満たすポイント を盛り込むことが大切です。
例として
- 学びたい人には「セミナー費用を医院が半額補助」「月1回の院内勉強会あり」
- 子育て中の人には「学校行事で休みが取りやすい」「同じ子育て世代のスタッフが複数在籍」
- 人間関係を重視する人には「スタッフ同士で感謝を伝える仕組み(ピアボーナス)」
こうしたリアルな情報は「この医院なら自分の欲求を満たせそうだ」と応募の決め手になります。
既存スタッフをもとにターゲット設定をした場合は、その対象スタッフに『転職時に何を求めていたか』『何が決め手でこの医院に入職したのか』を聞いてみてください。
それこそが『求職者へ医院がアピールすべきもの』になります。
求人票に表す際の重要ポイント
先生方が思った通りに書くだけでは、せっかくのベネフィットがうまく伝わらないことも。
「本当に伝わる求人」にするにはコツがあります。
そのポイントは、数字を使って具体例とともに表すこと。
子育て世代のパートさんが欲しい場合は...
- 【✏️例】
当院のスタッフ数は7名。
うち5人が30代-40代の子育て中のママさんなので、急なお休みも『お互い様』の心で助け合っています。
チーフ衛生士・院長も子育て経験者。子育てによる急なシフト変更に理解のある環境です。

見直し4)情報不足によるミスマッチ=離職を防ぐ
離職理由で意外に多いのが「思っていた職場と違った」というケースです。
求人票が給与や待遇などの条件だけに終始していると、応募者は自分の都合のよいように想像してしまい、入職後に「想像と違う」と失望してしまうのです。
だからこそ、求人票や採用サイトでは条件以上の“リアルな情報”を伝えることが不可欠です。
例えば:
- 出退勤は何時?
- 平均的な残業時間や有給取得率
- 教育体制やキャリアパス
- 院内の雰囲気
大切なのは「良い面だけを並べる」のではなく、デメリットも含めた事実を正直に伝えること。
「残業は月に数時間あるが、その分代休を取れる」「患者担当制を導入しているので責任は重いが、患者さんと密に関われる」といった情報は、むしろ応募者の信頼を高めます。
結果として「こんなはずじゃなかった」という早期離職を防ぎ、長期的な人材確保につながります。
本当に悪い面も伝えて大丈夫?応募が減りそうだけど....
実は求職者は『募集要項やサイトには良いことしか書いていない、どうせ実際は違うんだろう』と、疑いの目で見ていることが多いんです。(弊社実施 DHアンケートより)
悪い面も正直に伝えることで、『ここは正直で誠実な医院だな。』と、求職者にとってはむしろプラスに働くのです。
もちろん伝え方には工夫が必要です。
見直し5) 【適性検査】ミスマッチを数値で測る
採用面接では、応募者の本音や仕事への適性を見抜くのは簡単ではありません。
緊張や準備された受け答えのせいで「実際に働いてみたらイメージと違った」というミスマッチが起きやすいのです。
そこで有効なのが、適性検査の導入です。
たとえば「CUBIC」と呼ばれる検査では、性格傾向や仕事のスタイルを数値化して確認できます。
- マニュアルを守り正確に仕事を進めたいタイプなのか
- 自主性や積極性が強く、患者対応で力を発揮するタイプなのか
- チームで協調して動けるか、それとも個人で黙々と進めるのが得意か
こうした情報を面接と併せて確認することで、「医院が求める人物像」と「応募者の特性」が合っているかを客観的に判断できるのです。
例えば、
- 予防歯科を重視して継続的に患者と関わりたい医院なら、協調性や丁寧さが高い人材が適している
- 自由診療や新しい施術に積極的に挑戦したい医院なら、行動力や柔軟性がある人材が向いている
面接だけでは判断しづらい部分を補えるため、「採用したけどすぐ辞めた」という失敗を大幅に減らすことが可能になります。
CUBIC 個人特性診断・組織分析:https://www.brainstar.jp/service_develop/cubic.php
人手不足時代でも、歯科衛生士に選ばれる医院になるために
求人倍率は高止まりし、資格を持っていても現場で働く歯科衛生士は半数以下。
待っていても人が来る時代は、すでに終わっています。
それでも一部の医院には、今も安定して歯科衛生士が集まっている。
採用がうまくいく医院の違いは、「歯科衛生士が本当に求める情報」を適切に伝えられているかどうかです。
本記事ではその方法の一部をご紹介しましたが、より具体的・実践的な方法は、こちらのセミナーで詳しく解説しています。
これまで1,850名以上の歯科院長が参加し、99.8%が「満足」と回答した人気セミナーです。
人手不足を「仕方ない」で終わらせず、採用の進め方を一度見直したい先生はぜひご参加ください。


