院長先生の医院では、女性スタッフの割合はどのくらいでしょうか?
「院長以外は全員女性」という医院も多いと思います。
歯科医院をはじめ、クリニックや介護施設などは女性が多く活躍する職場。
「女性スタッフからよく相談される」
「意見や要望もなんでも言ってもらえる」
そう思っていても、もしかしたらスタッフさんは性別が違うからこそ院長先生に「言いたいこと」「意見したいこと」を言い出せずにいるかもしれません。
今回は、歯科医院を例に女性スタッフの立場になって職場環境を考えてきましょう。
ちょっとしたところを改善することで、女性スタッフがもっと生き生きと働ける職場になるかもしれませんよ。
お手洗いに関する悩み
以下はスタッフが抱えがちな悩み一覧です。
ご自身の医院で当てはまるものはいくつありますか?
- スタッフ専用のお手洗いですか?
- お手洗いは男女別ですか?
- ウォシュレットはついていますか?
- 洗面台は別についていますか?
- お手洗いはスタッフの人数に合った数用意していますか?
スタッフ専用のお手洗いがない医院では、患者様と共用することになります。
お仕事の途中、待合室内のお手洗いを使うことは控えたい…そう思う女性が多いことをご存知ですか?
患者様と共用だから使いづらい・お仕事が忙しくお手洗いに行けない・スタッフ数が多いのにお手洗いが一つだからなかなか空かない…そんな医院の設備の問題で膀胱炎などの病気になってしまう…。
院長先生の医院ではそんなお話は聞きませんか?
もしかしたら「言いづらくて耳に届いていない」だけかもしれません。
実際にあった「女子校のお手洗い改革」
私が実際に体験した高校時代のエピソードです。
この高校では、ある年にお手洗いの全面改修がありました。
高校自体が古く、お手洗いはほぼ和式でお世辞にも綺麗とは言えない状態、さらには女子校なのに男子トイレが同じ数用意されていて「この分女子トイレならいいのに」とよく話していました。
そこに赴任した女性の校長先生が、お手洗いの全面改修をしてくれました。
女子トイレの数を増やし、全て洋式・ウォシュレット付き・洗面台の数も増加、電気も自動点灯と、すごく綺麗な状態になったのです。
学生は全員女性だったのに、それまでの男性の校長先生はお手洗い事情に気づかなかったんですね。
大人になった今でも、当時の校長先生のことはよく覚えています。
女子高校生でもそれだけお手洗いには重きを置いているのです。
お化粧直しや歯磨き、生理をはじめ体調の変化などが起きやすい成人女性にとって、お手洗いは院長先生が思う以上に大事なポイントなんです。
言いづらいから汲み取ってほしい「生理事情」
どんなに仲が良くて相談しやすい院長先生だとしても、生理に関するお悩みや相談はなかなかしづらいものです。
それが、新卒などの若いスタッフならなおのこと。
院長先生と若手スタッフの間に入って意見を聞いてくれるベテランスタッフなどの立場がいない限りは、女性特有のお悩みは耳に入りにくいと思います。
- 生理痛がひどくて仕事ができない
- 生理痛を理由にお休みを取りづらい
- 腰回りが冷えて痛みが増す
- 座り仕事だからよりキツい
- 服が汚れていないか心配
- お手洗いに行く時間が取れない
生理休暇とは?
生理休暇は、労働基準法で定められている休暇です。
申請を受けたら院長先生は受理をしなければなりません。
しかし「生理であると院長に伝えづらい」「忙しいのに生理を理由に休んでいいのか」などの理由で、取得をしていないスタッフが多いのが事実。
もし取得申請を受けたことがない院長先生がいたら、それはスタッフが痛み止めを飲んで頑張っている、もしくは有給を使っていることになります。
有給も数が決められていますよね。
体調不良のために毎月1日使っていたら、年間付与数を超えてしまって生理休暇だけで有給がゼロになってしまいます。
処方された薬によっては副作用が出てしまうケースもあるため、有休消化をカバーできる生理休暇は女性にとってありがたいものです。
特に、最近はPMSや月経困難症を発症する女性も多いです。
PMSとは、月経の始まる前、3~10日の間に続く精神症状や身体症状のこと。
月経開始とともに症状が弱くなったり、解消されたりします。
一方、月経困難症は月経中にあらわれる強い下腹部痛や腰痛をはじめとする、不快な症状を指します。
症状は多いものから順に、下腹部痛、腰痛、腹部膨満感、嘔気(吐き気)、頭痛、疲労・脱力感、食欲不振、イライラ、下痢、憂うつなどが挙げられます。
私が前にいた会社はほとんど女性社員だったこともあり、生理休暇が毎月1日付与されていました。
「毎月1日はちょっと多いかも…」と感じる先生は、2ヶ月に1日からはじめてみるのもいいかもしれません。
また、「生理休暇」と申請するのが嫌だというスタッフに向けて、独自の休暇に呼び替えてみるのもいいかもしれません。
医院によっては「生理のための休暇」とせずに、「通院などで体調を整える休暇」と定めて、生理が重い人は休んで、持病を持っている人は通院し、妊活中の人は通院治療に充てる、などそれぞれに合わせた使い方ができるようにしています。
生理休暇は半日単位や時間単位での取得もできるため、「朝痛み止め薬を飲んで、落ち着いてから出勤したい」場合に時間単位で休暇をとったり、「急な体調不良で辛いから、午後病院にかかりたい」場合に半日休んだりすることも可能です。
また、生理休暇は医院の判断で無給にすることもできますよ。
参考の上で、できる範囲でぜひ取り入れてみてくださいね。
生理中の仕事がとにかく大変!
お手洗いに行く時間が取りづらいがために制服が汚れてしまったり、しんどいときに薬が飲めなかったりと、ここでもお手洗い事情が絡んできます。
一瞬の間でお手洗いに行こうとしても、一旦休憩室にある荷物からナプキンを取り出して…となると時間が厳しくなります。
だからこそ、女性スタッフのためにもスタッフ専用・女性専用のお手洗い・洗面台を用意しておくと、棚にナプキンを用意しておくことができます。
また、冷え性の方は特に腰回りの冷えがキツくなります。
さらに、ずっと座っての治療はよりいっそう痛みが増します。
生理中の症状で仕事への影響を感じる人が大半です。
その中でも特に多かった影響が「仕事の進みが遅くなった」「集中力が落ち、仕事のミスが増えた」こと。
人によっては貧血・目眩、手足の痺れなどの症状があることも。
スタッフの体調不良は、治療中の患者様にとっても危険が及んでしまいます。
生産性や安全性の向上のために、スタッフの体調不良はケアしてあげましょう。
重い症状のときには無理せず休んでもらい、軽い症状のときでも暖かい格好を推奨する・ブランケットを用意する・スタッフ用のカイロを用意するなど、対策をしてあげてくださいね。
意見を伝えてくれるリーダー職の存在が必要
「意見は直接院長に言える!」
これは素晴らしいことですが、やはりお手洗い事情や生理のお話などは異性にはしづらいもの。
また、最近は妊活のためにお休みをもらいたいけど、言い出しづらくて辞めてしまうという歯科衛生士さんのお話もありました。
院長先生から聞き出そうとすると「ハラスメントになるのでは?」と心配もありますよね。
秘書役やリーダー役などがいるならばその人に、いないようでしたら、意見とりまとめ役を誰かに指名することをお勧めします。
人に言いづらい生理や体調不良については同性のスタッフだと相談しやすくなりますよ。
リーダー職に関する記事はこちらを参照ください。
また、スタッフが様々な制度や休暇、休憩を利用しやすくする雰囲気づくりも重要です。
日常的にスタッフ同士でのコミュニケーションをこまめに取り、意見を言いやすい環境を整えておきましょう。
特に、生理は人によって症状が様々。
「私は取ったことないのにあの人は毎月休んでいる」「痛みに弱い」「甘えている」などの感情を抱くことはもってのほかです。
そんな空気にならないような職場作りをしていきましょう。
先に「察して」意見の先回りをしましょう
「とりあえず意見を聞いてから取り組もう」では遅い!
求職者は医院の隅々まで見て応募をします。
「ここはお手洗いが共用なんだ…」
「忙しい医院なら生理休暇なんて無さそう…」
そんな理由で応募をやめる求職者は、院長先生が思っている以上に多いのです。
先回りして用意をして、福利厚生に早めに追加しちゃいましょう!
求人採用も女性目線のアピールが重要
いかがでしたか?
女性スタッフが多い職場においてなにより重要なことは女性目線の職場環境の整備。
1人で作り上げるのが難しいときには、リーダー職や主任スタッフ・取りまとめ役との連携があるとスムーズに進められますよ。
リーダー職がいない・トップダウンの仕組みになっている医院では、今後の定着や医院展開に危険信号が出る可能性があります。
ご紹介したリーダー職の記事とあわせて、より女性が働きやすい医院づくりを目指しましょう。