歯科医院における人材不足は深刻な課題となっています。
特に、歯科医院の求人採用は他の医療職と比べても難しい傾向にあります。そのため、多くの歯科医院がスタッフの確保に苦労しているのが現状です。
本記事では、歯科助手の離職率が高いと言われる要因と、スタッフが安心して長く働ける職場をつくるための方法をご紹介します。
歯科助手の離職率が高いと言われる理由とは
歯科助手がすぐに辞めてしまう背景には、働く環境の厳しさや人間関係の悩みなど、いくつもの理由が関係しています。
特に、新しく入ったスタッフが短い期間で辞めてしまうことが多く、その原因を知ることが人が長く働ける職場づくりの第一歩になります。
1. 労働環境の厳しさ(長時間労働・低賃金)
多くの歯科医院では、朝8時台から夕方19時過ぎまで働くことも珍しくなく、拘束時間の長さも一つの要因となっています。
歯科助手の業務は、診療のサポートだけでなく、器具の滅菌や院内の清掃、受付対応など、多岐にわたります。そのため、業務量の多さが離職につながる大きな要因となっています。
また、「業務量の割に給与が低い」と感じる歯科助手も多くいるようです。実際に、歯科助手の年収は339万円と、歯科業界の平均を下回っています。
2. スタッフ同士の関係や患者対応のストレス
歯科医院では、医師、歯科衛生士、受付スタッフなど、さまざまな職種のスタッフが一緒に働いています。それぞれの立場や役割が異なるため、コミュニケーションの行き違いやチームワークの乱れが起こりやすい環境です。
- ❌ 歯科医師からの一方的な指示や叱責
- ❌ 先輩スタッフとの人間関係のトラブル
あなたの医院では当てはまりませんか?
特に、新人スタッフにとって特に大きな精神的負担となり、辞めたくなる原因にもなっています。
3. スキルアップ・キャリアアップの機会の不足
衛生士と違い国家資格がないこともあり、スキルが身に付かない、将来のキャリアパスが見えづらいと感じる歯科助手も多いようです。
歯科助手の多くの抱える不安には、以下のようなものがあります。
「今の仕事を続けても、将来性があるのか不安」
「スキルアップのチャンスが少ない」
「給与が上がる見込みがない」
これらの不安が、歯科助手スタッフのモチベーション低下や離職に繋がる原因となっています。
4. 出産・育児との両立の難しさ
歯科助手の多くは女性であるため、結婚や出産、育児といったライフイベントとの両立が大きな課題となっています。特に、以下のような状況が問題となっています。
- 土曜診療が一般的で、家族との時間が取りにくい
- 急な子どもの発熱などへの対応が難しい
- 育児休暇後の復帰支援体制が整っていない
これらの要因により、ライフステージの変化に応じた働き方を調整するのが難しい現状があります。
歯科助手は本当に離職が多いの?
歯科助手の離職率に関する具体的なデータは公表されていませんが、医療業界に属する職種であるため、医療業界全体の離職率が参考になります。
厚生労働省の令和2年の調査によると、医療・福祉業界の離職率は14.2%と報告されています。
「歯科助手はすぐに辞める」というイメージがあるのはなぜでしょう...
衛生士とは違い資格不要で働けるので、「簡単に就けて簡単に辞められる」というイメージもあるのかもしれないですね。
実際の歯科助手の声
ほかにも、労働条件への不満、人間関係、結婚・出産、キャリアアップのためなどの理由が挙げられます。
スタッフが辞めない歯科医院にするためには?
どうすれば長く続けてもらえる医院になれるのでしょうか?具体的な対策をお伝えします。
【勝負は面接時から】互いに納得した状態で採用決定する
スタッフが長く働いてくれるかはまず面接から。お互いに納得ができた状態で採用決定を伝えるようにしましょう。
面接時は、業務内容や待遇について明確に説明し、歯科助手としてどのような仕事をするのか、どのような待遇が得られるのかを理解できるようにします。
また、働くうえでの希望や不安点を丁寧に聞いておくことで、相互に納得のいく形で採用の決定ができます。
さらに、面接前後に医院を見学を見学してもらい、求職者が職場に合うかどうかを自分で判断してもらうことも大切です。
定期的な面談で悩みや不満をヒアリングする
定期的に面談を実施し、スタッフの悩みや不満を知ることが大切です。
面談で確認すべき項目は以下の通りです。
- 業務上の問題や悩み
- 職場環境についての意見
- 数ヶ月後、数年後のキャリアプラン
その場限りのヒアリングにならないよう、可能な限りで対応策を提案し、より働きやすい職場を作るよう努めましょう。
チームワークを重視した職場環境を作る
職場のチームワークを高めるための具体的な取り組みとして以下が挙げられます。
- 業務のローテーション制
- メンター制度の導入
- 意見箱の設置
- チーム制による相互サポート
業務のローテーション制を導入することで、スタッフがさまざまな仕事を経験し、チームの連携が強くなります。
さらに、メンター制度で経験豊富なスタッフが新人をサポートすることで、職場内のサポート体制が整い、誰もが安心して働ける環境が作られます。
スキルアップ・キャリアアップの機会の提供
新人のための教育研修のほかに、歯科助手向けの民間資格取得のサポートも効果的です。
資格取得が一つのモチベーションになるだけでなく、スキル・知識の向上を実感することができます。
- 定期的な院内研修の実施
- 外部セミナーへの参加支援
- キャリアパスの明確化
「2年目までに基本的な診療補助スキルの習得」など、具体的な目標を設定することで、仕事のモチベーションにも繋がります。
歯科助手にお勧めの資格は下記からご覧ください。
労働時間・休暇制度の整備
働きやすい環境を作るためには、ワークライフバランスを保つための労働時間・休暇制度の整備が必要です。
✅ シフト制で労働時間を調整
シフト制にすることで、ピーク時間帯の人員配置がしやすくなります。
✅ 時短勤務制度の導入
それぞれのライフスタイルに合わせて働き方を選べることで、結婚・出産を経ても長く働くことができます。(短時間正社員について)
✅ 休憩時間の確保
患者の予約に余裕を持たせ、スタッフがしっかり休憩を取れるようにしましょう。
✅ 有給休暇を取得しやすく
有給休暇の取得目標を設定し、定期的にアナウンスしましょう。
適切な給与と評価の仕組みづくり
経験やスキルが正しく評価されないと、自分は認めてもらえていないと感じ、医院に対し不満を持ちます。
「この先続けたところで....」と思われる原因は、この人事評価の仕組みが整っていないことにあるのです。
歯科助手の待遇改善には、以下の取り組みが有効です。
- 経験に応じた給与体系の整備
- 資格取得支援制度の導入
- 業績に応じたボーナス制度
まとめ:歯科助手の人材不足解消に向けて
歯科助手の離職率が高いのは、さまざまな要因が影響しているから。しかし、女性が働きやすい環境を整え、適切な対策を講じることで、定着率を向上させることが可能です。
まずは小さいところから見直してみませんか?歯科助手スタッフの定着率を上げることは、ひいては質の高い医療サービスの提供に繋がっていきますよ。