人事評価を「おかしい」と感じる従業員の本当の気持ち|改善方法の紹介

人事評価

一般企業ではポピュラーとなっている「人事評価制度」。
スタッフの育成や自院の成長のために、人事評価制度を取り入れる医院も増えてきているようです。
しかし、人事評価制度が上手く機能していない場合、スタッフの評価制度に対する不満がふくらみ、自院への意識が低下するなど、マイナスの影響を及ぼしかねません

この記事では、歯科医院のスタッフが「おかしい」と感じる人事評価が生まれてしまう理由や、不公平な人事評価を生まないための改善方法・ポイントについて解説します。

人事評価制度とは

「人事評価制度」とは、スタッフの働きぶりやスキルなどを一定の基準をもとに評価する制度です。
以下のような目的で導入されます。

  • 活躍するスタッフを正当に評価することでスタッフのモチベーションの向上を目指す
  • 個人が自ら高い評価を獲得するため行動することで、生産性の向上を目指す

結果として「医院の業績向上」「医院への所属意識を高め、離職率の低下」などにもつながります。

スタッフがおかしいと思う人事評価の特徴や事例

人事評価制度を導入する際は、公平性や透明性を担保することが重要ですが、自院のスタッフにとってもメリットのある制度にしようと考えていても、必ずしも正しく機能する制度を構築できるとは限りません。
2018年にアデコ社が実施したアンケート調査【「人事評価制度」に関する意識調査】によると、勤め先の人事評価制度に不満を持つ従業員は62.3%に上ることが分かっています。

Q1. あなたはお勤め先の人事評価制度に満足していますか。
不満:62.3%
満足:37.7%

Q2. 人事評価制度に不満を感じる理由を教えてください。
評価制度が不明確:62.8%
評価者の価値観や業務経験によって評価にばらつきが出て、不公平だと感じる:45.2%
評価結果のフィードバック、説明が不十分、もしくはそれらの仕組みがない:28.1%
自己評価よりも低く評価され、その理由がわからない:22.9%
評価結果が昇進、昇格に結びつく制度ではない:21.4%

※参考:アンケート調査【「人事評価制度」に関する意識調査】|Adecco Group

人事評価制度に対するスタッフの不満は、どうしても出やすいのが事実です。

ここからは、具体的にスタッフが「おかしい」「不公平」と感じやすい人事評価の特徴を6つご紹介します。

①評価項目が多い

評価制度は、スタッフが働く際に指標となるものです。
そのため、評価項目は医院のスタッフが覚えている状態で運用する必要があります。
しかし、スタッフがやるべきことを全て網羅しようとして、評価項目が30個40個と多くなってしまうケースがあります。
スタッフがすべて覚えることは難しく、働く際に意識して取り組むことができなくなってしまうことも少なくありません。

②評価が曖昧

定量的な評価項目は公平な評価となりやすいですが、「協調性」「責任感」「リーダーシップ」などの定性的な項目がある場合、注意が必要です。
定性的な項目は曖昧な評価となりやすいためです。

技術職などは比較的、定量的に評価が可能ですが、事務職などは定性的な評価をせざるを得ません。
また、そもそも「基準が定まっていない」というケースもあります。評価者の経験や主観で評価を決めてしまうなど、何を重視して評価しているのか分からず、個人的な感情に基づいているのではないかと不信感を感じてしまうこともあります。
曖昧な評価や、評価者によりバラつきがあると、評価者と評価を受けるスタッフとの間で合致することが難しく、不公平感や不満を感じる要因となります。

📝人事評価エラー
評価者の心理的作用により事実と異なる評価をしてしまうことを「人事評価エラー」といいます。
以下のようなものがあります。
● ハロー効果:目立つ特徴に引きづられ、評価が偏ること
● 寛大化傾向:厳しすぎないよう配慮し、甘めの評価を行うこと
● 厳格化傾向:客観性に配慮し、厳しい評価を行うこと

③評価者が複数存在して複雑

評価制度では、複数の評価者により評価が行われる場合があります。
自己評価に加えて「二次評価」「第三者評価」を行い、その後に院長が最終決定をするなどです。
評価者が増えると、評価を受けるスタッフは、誰が本来の評価者なのか正しい認識ができず、それぞれから求められることに応えようとして迷う恐れがあります。

④フィードバックが不十分

人事評価制度では、評価に加え、フィードバックや医院のスタッフへの説明が不可欠です。
「評価すること」だけで終わってしまうと、スタッフは「何を改善すれば評価が上がるのか」「自分の何を評価されたのか」が分からず、次につなげることができません。

⑤仕事のプロセスへの評価がない

仕事のプロセスや難易度と人事評価は、連動させる必要があります。
成果が目立たない仕事への評価が低くなってしまうと、スタッフのモチベーションが低下します。
スタッフの頑張りに対して正当な評価がされていないと感じてしまうと不満につながります。

⑥年功序列での評価

人事評価制度を取り入れても、昇進や昇給が、仕事への評価ではなく年功序列が基準となっている場合、不満が生じやすいです。
仕事への評価結果は良くても昇進や昇格に反映されなければ、人事評価制度を行う意味がないと感じてしまうためです。

おかしい人事評価が起こすデメリット

医院のスタッフが人事評価に不満を持つ理由をご紹介しましたが、続いてスタッフが不満を持つ人事評価制度を継続すると、どんなことが起こるのか解説します。
スタッフの不満を放置してしまうと、大きく4つのリスクがあります。

①スタッフのモチベーション低下

スタッフが「人事評価がおかしい」と感じ、医院に対する不満がふくらむと、仕事に対するモチベーションが低下します。ひとりのモチベーションが下がると、医院全体にも伝染しやすいです。

②生産性の低下

スタッフのモチベーション低下は、医院全体の生産性や業績にも影響する可能性があります。
業務の作業効率が落ち、労働力が低下するためです。
医院のイメージダウンにもつながりかねません。

③退職率の上昇

人事評価制度にスタッフの納得感がなく、適切に評価されていないと感じた場合、転職を選ぶスタッフもいます。
退職者が増えると、そのスタッフの持つスキルが失われるだけでなく、新たな採用活動や育成が必要となり、負担が大きくなります。
最近の場合は、SNSや口コミサイトなどで医院の人事に関する評価・不満を書き込まれるリスクもあります。
自院のイメージダウンとなる可能性もゼロではありません。

④訴訟のリスク

最悪の場合、スタッフと損害賠償を争う裁判など深刻なトラブルに発展してしまう危険性もあります。
例えば不適切な人事評価がパワハラと扱われてしまった事例などです。

人事評価を成功させるポイント・改善方法

ここまで、スタッフが「おかしい」と感じる人事評価についてご紹介しました。
次に、そのようなおかしい人事評価を生まないための改善方法として6つのポイントを解説します。
少しでもスタッフが不満や疑問を持っている場合は、なるべく早く対策を行いましょう。

①評価項目を必要最低限に抑える

評価項目は、スタッフが働く時に常に意識できるよう、最低限に抑えましょう
やるべきことを全て網羅しようとすると項目が増えてしまうかもしれませんが、複数のやるべきことができていなければ達成できない項目を残すことがポイントです!

②明確な評価を行う

評価は、誰が評価者であっても「できたか」「できていないか」が同じ判断となることが重要です。
明確な判断ができないと、評価者と評価を受けるスタッフの間で認識がずれるため、不公平と感じてしまい、不満がふくらむ原因となります。
明確で公平な評価項目があれば、(公平な評価が行われているかの確認のための)複数人による評価も不要になります。

③フィードバックを適切に行う

フィードバックやスタッフへの説明は必ず適切に行いましょう。
以下のような内容を盛り込み、フィードバックしてください。

  • 人事評価制度の説明(評価基準)
  • 評価の結果に対する理由や経緯、評価基準への達成状況(良かった点・改善点・次の目標)
  • 具体的なアドバイス
  • 期待していること

また、人事評価の際は、積極的にコミュニケーションをとることも大切です。
定期的に1on1ミーティングなどの機会を設けることをおすすめします。
評価に必要な情報を把握することはもちろん、より適切なフィードバックを行うことができます。
また、日頃から信頼関係が築くことができれば、評価に対する認識のズレも調整することができます。

④人事評価制度の理解度を深める

人事評価制度を導入する際は、必ず医院の全スタッフへ人事評価の目的を理解してもらいましょう
目的を伝えてスタッフがなぜ人事評価を行うのか納得した上で、評価基準の説明を行うことが大切です。
理解が深まれば、目標達成に向けて業務に集中できます。

⑤定期的に見直して問題点は変更する

医院の環境に変化があったり、評価制度に問題が発生した場合は、すぐに改善する必要があります。
曖昧な評価制度基準で運用を進めてしまうと、問題が発生した際に変更するための労力がかかりますが、明確な基準があれば、問題が発生した際も改善しやすいです。

まず見直したい3つの評価基準は以下です。

成果評価

技術職など定量的な評価が可能な職種は基準を明確にしやすいですが、数値で成果を表しにくい事務職などは、評価基準の設定が重要です。
定性的な評価項目の場合は「何を」「いつまでに」「どのように」を明確にしましょう。全てできて100%とし、基準をB評価とすると明確に評価することができます。

💡定性的な評価基準の例
【S評価】著しく期待を上回った場合
【A評価】期待を上回った場合
【B評価】期待通りの場合
【C評価】期待を下回った場合
【D評価】著しく期待を下回った場合

能力評価

職種や役職に見合ったスキルや知識などの要件を整理し、基準を定めましょう。
その他、業務遂行力や改善力などは、自院に必要な人材を明確にし、必要なスキルを要件に落とし込みましょう。

情意評価

医院がスタッフに求める行動や姿勢を明確化して、基準を定めましょう。
若手のスタッフは、情意評価の比重を高くし、プロセス重視の評価を行うことがおすすめです。

📝その他の見直しポイント
● 評価マニュアルの作成:評価基準や項目を明文化する
● 評価項目の適合性:業務内容や役職に応じた評価項目が設定されているか
● 評価方法の見直し:相対評価を行っている場合は、絶対評価を取り入れるなど

⑥評価制度を刷新する

現在の評価制度が不公平や不満が大きい場合は、制度を刷新するという方法もあります。
ここでは4つの刷新方法をご紹介します。

コンピテンシー評価

優秀なスタッフの行動や思考をもとに評価項目や基準を設定する制度のことです。
評価基準が具体的なため、スタッフも理解しやすく、曖昧な評価の改善にもつながります。

目標管理制度(MBO)

スタッフ自身が医院の目標とつながる個人目標を決めて、その進捗状況・達成状況に応じて評価を行う制度のことです。
スタッフが個人目標に向けて自主的に行動ができる評価方法です。

360度評価

評価を受けるスタッフを多面的に評価する制度のことです。
上司や院長だけでなく、同僚や後輩なども評価者として携わります。
多くの人が評価するため、客観性が担保されるメリットがある一方で、上述した通り評価者が複数で複雑になるデメリットもあるため、注意が必要です。

評価者研修

こちらは評価方法ではありませんが、曖昧な評価基準をなくすため、評価者への研修を実施することも刷新のひとつです。評価スキルの均一化は公平な人事評価制度を行う上で重要です。
評価者としての役割から評価のポイントなど評価者へのサポートにもぜひ目を向けてください。

📝評価者が身につけるべきスキル
● 人事評価エラーの理解
● 公平な評価を行うスキル
● フィードバックのスキル
● 人材マネジメントスキル

評価制度により多くの価値を生み出そう

自院のスタッフから不満の声が上がったまま人事評価制度の運用を継続した場合、医院にとって大きなリスクやデメリットがあります。手遅れにならない間に、ぜひ一度見直ししてくださいね。

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