歯科衛生士を定着させたい!離職率の低い医院を作るためには

定着

歯科衛生士になる人は毎年約5,000人〜7,000人ほどいますが、不足した状態は続いています。

「募集してもなかなか来ない…」「長く勤務して欲しいのに、やっと決まってすぐ辞めてしまう…」そんなお悩みを良く聞きます。

今回は現役歯科衛生士に聞いた現場の話を盛り込みながら、歯科衛生士の離職率を抑えて、できるだけ長く働いてもらうにはどうしたらいいのか?について解説していきます。

実際に離職している歯科衛生士はどのくらい?

歯科衛生士の国家試験に合格し、歯科衛生士になる人の数は大きく変わっていません。それにも関わらず、歯科衛生士不足が改善されないのはどうしてでしょうか。

歯科医療振興財団の事業報告では、2019年2月時点の歯科衛生士名簿登録者数は28万3,032人です。(参照:平成30年度事業報告書 一般財団法人歯科医療振興財団)

しかし厚労省の令和2年衛生行政報告例を見てみると、就業歯科衛生士の人数は14万2,760人となっています。(参照:令和2年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況 厚生労働省)

つまり、歯科衛生士の資格を持っているのに歯科衛生士として働いていない、という人がほぼ半数にものぼるということです。せっかく取得した歯科衛生士という資格は、なぜ生かされていないのでしょうか?

離職後、復帰しない人も多い

歯科衛生士が一度離職してしまうと、その後はなかなか同じ職種に再就職をしない傾向が高く見られます。ステップアップや先輩・同僚との相性などが理由で退職する場合は再就職することがほとんどですが、ライフスタイルの変化により「復帰したくてもできない」状況にある歯科衛生士がいるのも事実です。

辞めてしまう歯科衛生士が多いのはなぜ?

では次に、歯科衛生士の退職理由について確認していきましょう。主な理由となっているのは次のようなものです。

  • ​​給与や待遇に不満があ​​る
  • 職場での人間関係が上手くいかない
  • ​​スキルアップが望めない環境である
  • 結婚や妊娠のため仕事を続けられない
  • 出産、育児のため働けない

退職の理由は職場に関するものと、ライフステージの変化によるものであることがわかります。

歯科衛生士の就職先は、歯科医院がほとんどです。コンビニよりも多いと言われる歯科医院の中から、働きたいと思えるところや自分に合ったところを見つけるというのは、歯科衛生士にとっても簡単ではありません。

就職活動を続けていてもなかなかここだというところが見つからないと、活動すること自体に疲弊してしまったり、自分には歯科衛生士が向いていないのではないか?と考えてしまうこともあります。結果として再就職を踏みとどまってしまったり、他の業種を選択する人もいるのです。

また結婚や出産といったライフステージの変化による引越しや環境の変化、育児の問題などにより「働きたい気持ちはあっても働けない」人も一定数います。

歯科衛生士が働き続けるためには「人」と「環境」が大切

ここでは実際に歯科衛生士から聞いた事例を交えながら、歯科衛生士が辞めてしまう要因を考えていきましょう。

結論から言いますと、長く働けるかどうかを左右するのは 「人」と「環境」です。

現場で働く歯科衛生士の率直な声を知りたい先生方は、ぜひ事例をチェックしてみてください。

離職に繋がる可能性の大きい具体的な事例を紹介

・院長や上司からのパワハラがある
ご本人には全くそのつもりがなくても、スタッフにとってはパワハラになっていることは意外に多いです。
例えば、気分によって態度が変わる・怒鳴る・暴言や悪口を言う・無視する・舌打ちするなど心当たりはないでしょうか。人間ですから、診療が大変な時やストレスの大きい時に感情が乱れてしまうのは致し方ないことかもしれません。しかし、このような態度はスタッフだけではなく患者様にも悪い印象を与えてしまいます
また院長だけではなく、長くいるスタッフとの不和や圧力などが原因になる場合もあります。この場合は、管理者である院長が間を取り持たなければなりません。

・指示しなくても察して動くようにいわれる
特に入社してはじめのうちは、歯科医院のやり方や器具器材の場所や使い方について把握できていません。経験があったとしても、医院独自のルールは知りませんし、使っている材料も違います。動けるようになるまでは時間が必要です。

さらにお互いどんな人かもわかっていない状況で、自分から動いて欲しいと思うのは無理な要望です。この自主的に動いて欲しいの中には「(思いどおりに)動いて欲しい」という気持ちがあるのではないでしょうか。
スタッフへの期待も込めた思いかもしれませんが、ここを間違えてしまうと「できると言っていたのに仕事ができないじゃないか」「人選を間違えたかもしれない」という思いが出てきてしまいます。そしてそれは言わなくてもスタッフには必ず伝わってしまいます。
例え長く働いているスタッフだとしても、他人同士です。して欲しいことはきちんと言葉にして伝えるようにしましょう。

・教えられていないことで叱責される
診療に追われていると、丁寧に教える時間がないこともあります。経験があれば「このくらいわかるだろう」と思うかもしれません。

しかし、入社して間もないスタッフであればあなたの医院のことをまだよく知りません。面倒かもしれませんが、子育てと同じように考え、一から根気強く教えるようにしてください。
きちんと教えずにその場は何とかなったとしても、他の場面でトラブルやミスに繋がる可能性は十分にあります。

【環境】
・福利厚生や待遇が充実していない

これは求職者は必ずチェックする部分です。社会保険や厚生年金がある・有給休暇が取りやすい・残業が少ないといった環境の整っている歯科医院は、やはり人気があります。
中には体調不良でも休めなかったり、休むと出勤しづらくなる医院もあるようです。

・衛生士業務以外の仕事が多い
例えば掃除や受付、アシスタントなど、歯科衛生士業務以外の仕事が多い歯科医院もあるでしょう。
現在、歯科業界では予防歯科という考え方が浸透し、歯科衛生士に求められる仕事も責任の重さも増えています。
そこでさらに歯科衛生士の業務以外もこなさなければいけないとなると、なかなか歯科衛生士業務に集中することが難しくなります。

・意見や提案を聞いてもらえない
立場の違う歯科衛生士だからこそ、見える部分や気づくこともあります。良かれと思って提案しても受け入れてもらえないと「自分はここにいる価値がない」と感じてしまいがちです。
意見や提案をそのまま採用する必要はありませんが、話をしっかり聞き、検討する姿勢は見せましょう。

・目の前の診療に追われてスキルアップできない
スキルアップを望んでいる歯科衛生士は少なくありません。診療が忙し過ぎると、人は新しいものを取り入れること自体が難しくなります。さらに新しい知識を学んでいかないと、毎日がマンネリ化してモチベーションも低下していきます。スキルアップに必要な時間が取れる環境を作っておきましょう。

・衛生管理に不安がある
これも意外と重視している人が多いので気をつけてください。整理整頓されていない様子を見ると、診療もそうなのでは?と不安になるようです。バックヤードをはじめ院長室も見ているものですので、ご注意くださいね。

・診療方針に疑問を感じている
例えば「患者様のため」と言いながら実際は利益重視であったり、説明不足であったりなどです。患者様に対する態度や院長の心持ちなども、歯科衛生士はしっかり見ています。お互いに一致していれば問題はありませんが、価値観の異なる場合は「合わない」と感じ退職に至るかもしれません。

この時注意したいのは、掲げている方針と実際の診療に矛盾が生じていないか?ということです。矛盾していると、医院への不信感に繋がってしまうこともあります。

職場を決める時に歯科衛生士が重視していること

歯科衛生士は職場を決める時や復帰を決める時に、何を重視しているのでしょうか。多くの人が大切にしている8つのことは次の通りです。

1.診療内容や業務内容が自分のやりたいことに合っているか
2.院長やスタッフの関係は良好か、相性はどうか
3.給与や賞与などの条件は希望に合っているか
4.福利厚生は整っているか
5.有給休暇が取れるか、休みにくい環境ではないか
6.教育体制
7.衛生管理が行き届いているか
8.通いやすい場所にあるか

診療方針や給与・労働条件、立地などはもちろん、人柄や歯科医院の衛生管理まで重視されていることがわかります。歯科衛生士にも「予防を中心に行いたい」「自由診療に携わりたい」「矯正歯科を身に付けたい」など、一人ひとりやりたい業務があります。

また患者様を一番に考えるのか、自分の働きやすさが一番なのかなど、それぞれの価値観によって優先するものも異なるものです。これらを総合的に考慮して、どの医院に勤務するかを決めています。

歯科衛生士の定着率を高めるポイント

ここまでで、歯科衛生士が何を求めているのかおわかりいただけたのではないでしょうか。歯科衛生士の定着率を高めるヒントをまとめると、次の通りです。

長く働きやすい環境を整える​​

家族が病気の時に気兼ねなく休める、午前中のみ午後のみの勤務が可能、時短勤務などライフスタイルの変化に対応できる勤務体制が求められています。核家族化している現代では、祖父母が孫の面倒を見られない家庭も多く、介護を行う立場にある人もたくさんいます。

教育体制を整える

新しく入社した人には、マニュアルを用意しておくと良いでしょう。また先輩スタッフがマンツーマンで教える機会を必ず設けるようにしてください。経験者ならわかることもありますが、同じことでも医院によって認識やルールは違うからです。特に問題なく事が運ぶ場合がほとんどかもしれませんが、後々ズレが生じてトラブルや定着率の低下になる可能性もあります。

忙しい中ではつい疎かになりがちですが、ここで時間を費やしておくことは医院の環境を良い状態に保つことに繋がります。

スタッフときちんとコミュニケーションの取れる環境を作る

ランチ会や食事会、社員旅行やイベントなど、診療以外でスタッフと関われる時間を作りましょう。仕事から離れてコミュニケーションを取ることは、お互いをより理解し合うために役立ちますし、仕事に生かすこともできるからです。

医院への貢献はきちんと評価して還元する

評価制度があっても、主観的であったりスタッフにわかりにくい内容だとしたら、スタッフにとって意味のないものになってしまいます。何をどのように努力したら良いのかが明確に把握でき、さらに結果をきちんと評価してもらえると思えば、モチベーションも自然と上がるはずです。

歯科衛生士の離職率が低い歯科医院は何をしている?

実際に、歯科衛生士の離職率が低い歯科医院の特徴を見てみると下記のような環境が整っています。

  • 人間関係が良好で居心地が良い
  • 福利厚生が整っている
  • 歯科衛生士としてやりがいを感じられる環境である
  • 給料と仕事の内容が見合っている​​
  • 産休育休制度や時短勤務などがあり、ワークライフバランスが取りやすい

先にあげた歯科衛生士が重視していることや、定着率を高めるポイントと見事に一致していますよね。

歯科衛生士の離職率は医院次第で変えられる

いかがでしたか?歯科衛生士が離職する理由は、人間関係の悪化やスキルアップの機会不足、待遇や労働条件の改善が見込めない場合などでした。しかしこれらは全て、医院側で対策をする事が可能です。

せっかくスタッフが入社しても、長く続かずに辞めてしまったのでは、いつまでも歯科医院運営は安定せず、採用コストも多くなってしまいます。医院の理念を叶えたい、全体のレベルアップを図りたいといった望みがあっても、その実現は遠い先の話になるでしょう。

自分一人で歯科医院運営をしていくことには限界があります。信頼できるスタッフや患者様から支持されるスタッフが多くいるからこそ、歯科医院経営が上手く回るようになるのではないでしょうか。

ぜひ今回ご紹介した「離職率を下げるための取り組み」を参考に、歯科衛生士にとって居心地の良い歯科医院を目指してください。きっと新しいスタッフだけではなく既存のスタッフまでもが「長く働きたい」と思える環境になるはずです。

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