従業員満足度が低いことは医院に損害!?満足度を高めて医院経営に活かす方法

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あなたの医院のスタッフが、業務や職場環境に満足しているかどうかお考えになったことはありますか?

毎日の診療に加え経営的な面でもやるべきことがあると、なかなかスタッフの気持ちの面まで見つめる機会はとれないかもしれません。
しかし、スタッフが現状に満足できている場合とできていない場合とでは、経営状態に大きな差が生じる可能性があるため決して軽視はできません

今回は、満足度を高める重要性と、スタッフの満足度が医院にもたらす影響について解説していきます。

従業員満足度(ES)とは?

スタッフの満足度を表すものに「従業員満足度(ES)」というものがあります。従業員満足度とは、従業員の仕事や職場に対する満足度を表​​した指標のことです。頭文字をとってESと呼ばれることもあります。

具体的には、仕事内容や職場環境、福利厚生や待遇、仕事のやりがいなどにどれだけ満足感を抱いているのかを表したものになります。

今後ますます重要視される従業員満足度

なぜ今、従業員満足が重要視されるのでしょうか。日本のどの業界にもいえることですが、人材の確保が難しくなっています。少子高齢化・人口減少に伴い、労働人口も必然的に減少していくからです。

リクルートワークス研究所が行ったシミュレーションによると「今後予測される労働人口の不足数は、2030年に約341万人、2040年には約1,100万人」とされています。

※参考:未来予測 Section1「労働力不足社会」のリアルを描き出すーリクルートワークス研究所

ご存知の通り、歯科業界でも新しい人材の採用は簡単ではありません。こちらをご覧になられている先生方の中にも、まさに今困っている、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今後、労働人口が減少するにつれ、歯科業界も人材不足が加速することは想像に難くありません。もし、今現在は人材確保に困っていなかったとしても、将来を見据えて今から備えておく必要があると思いませんか。そこで重要となるポイントの1つが「従業員満足度」なのです。

従業員満足度が低いとどんな影響がある?

従業員満足度の重要性をよりご理解いただくために、満足度が高い・低い医院の従業員ではどのような違いがあるか考えていきましょう。それぞれ特徴をあげていきます。

《従業員満足度が高い医院》

  • チームや組織の生産性が高い傾向がある。
  • 従業員が与えられた仕事をこなすだけではなく、自発的に業務を行っている
  • 院内のコミュニケーションが活発
  • 従業員の定着率が高く、離職率が低い

《従業員満足度が低い医院》

  • 指示された仕事をこなすだけになっている。
  • 従業員のモチベーションが上がらないため、問題点があっても改善に繋がらない。
  • 院内のコミュニケーションが上手く取れていない。
  • 仕事へのやりがいが感じられず、離職率も高い傾向がある。

このように、従業員満足度が低いと医院自体が成長することも難しくなってしまいます結果として、その先にいる患者満足度も上がることはなく、負のループに陥ってしまう危険性が非常に高いため気をつけたいところです。

もしかしたら、現在のスタッフの行動や態度など心当たりがあるものがあった先生方もいらっしゃるかもしれません。ちなみに、満足度の低い医院では「スタッフの考えを聞かない」といった傾向が多く見られるようですので、思い当たる方はぜひ可能な限り見直して見てください。

従業員満足度の向上により得られる6つのメリット

従業員満足度を高めることで、医院は大きなメリットをたくさん得られます。ここでは期待できるメリットを具体的に6つあげていきます。

①生産性の向上

スタッフ一人ひとりの満足度が高いと、必然的にモチベーションも高くなります。仕事への意欲が向上したり、さらに良くするためにはどうしたら良いかなど、スタッフが自発的に考えて行動する機会も多く見られるようになります。結果として、医院全体の生産性も上がる傾向が高くなります。

②患者満足度の向上

スタッフのモチベーションが上がると、仕事の質も良くなり、患者様への対応にも変化が起こります。それに伴い、質の良い治療・心地よい対応に満足する患者様も増えるでしょう。

③離職率の低下

満足度が高い職場を退職したいと思うスタッフはなかなかいません。離職率が下がると、長く勤務してくれるスタッフが増えるため、優秀な人材も育ちやすいといえます。

④帰属意識が高まる

医院に対する不満を感じなくなると、スタッフ自身も医院に対して愛着心を持つようになるものです。「もっと良い医院にするために何ができるか」と積極的に考えるようになり、帰属意識も高まることが期待できます。

⑤業務の効率化が期待できる

誰でもモチベーションの高い状態では、効率の良い働きができるようになるものです。スタッフの満足度は、業務の効率化にも繋がります。

⑥採用力が高まる・採用コスト削減

スタッフが満足しているかどうかは、周りから見てもわかるものです。新たに増員をする場合、そのような様子を見て「ここで自分も働きたい」と考える人材は少なくないのではないでしょうか。スムーズに採用が決まれば、採用コストも削減することができ一石二鳥です。

従業員満足度の仕組みとは?

従業員満足度を高めたい、と思っても「どうすればスタッフの満足度が高まるか」ということを押さえられていなければ、空回りに終わってしまいかねません。そうならないように、ここで人間の「欲求」と「満足」の仕組みについて2つの理論から確認していきましょう。

・マズローの欲求5段階説

アメリカの心理学者アブラハム・H・マズロー氏によって提唱された理論です。人間の欲求は「生理的欲求」「安全欲求」「社会的欲求」「承認欲求」「自己実現欲求」の5つからなり、下層の欲求から順番に満たされていくというものです。

この5つが満たされるような医院であるほど、従業員満足度も高くなります。

・ハーズバーグの二要因理論

フレデリック・ハーズバーグ氏によって発表された理論で、満足度を向上させる「動機付け要因」と満足度を低下させる衛生的要因の2つからなります。

動機付け要因は「仕事への興味関心や昇進・達成など」で、これが満たされると満足度は高まりますが、不足しても満足度の下がる直接的な原因にはならないとされています。

衛生的要因は「職場環境や待遇など」を指し、不足すると満足度が下がりますが、満たされてもある程度までしか満足度は上がらないと考えられているようです。

「動機付け要因」と「衛生的要因」この2つのバランスが大事だとされています。

従業員満足度の7つの要素

従業員満足度を構成する要素には「企業理念・行動方針、仕事内容、マネジメント・評価、人間関係、職場環境、給与待遇、福利厚生」の7つがあります。

これらを見直していくことで、従業員満足度を向上させることに繋がります。

従業員満足度を低下させる原因とその対策

もし医院のスタッフが現状に満足していない様子があるなら、放置しておくことは厳禁です。満足度の低下は、やがて退職に繋がってしまうことも少なくないからです。

ここでは、7つの要素それぞれにおいて従業員満足度が低下する原因についての一例をあげながら、対策までお伝えしていきます。もし思い当たる項目のある院長先生がいらっしゃいましたら、ぜひ参考になさってください。

①医院の理念・行動方針

スタッフが医院の理念について理解や共感をしていない場合、不満が生じてしまう可能性が高いです。例えば「業務内容が大変」という同じ状況でも、それによって不満に繋がるのかやりがいになるのか変わってしまうからです。

スタッフが医院の理念や行動方針をしっかり理解できるよう、日頃から意識して伝えていくようにしましょう。

②仕事内容

スタッフが業務にやりがいを感じられない場合、満足度は低下しがちです。スタッフ一人ひとりの能力に見合った仕事を任せられるようにしましょう。仕事へのやりがいは、モチベーションを高め、生産性の向上にも繋がります。スタッフと面談の機会を設け業務内容について話し合うのも効果的です。

③マネジメント・評価

マネジメントや評価への不満は、満足度が著しく低下するため気をつけたいところです。例えばチーフなどに裁量を与えている場合、全てを任せきりにしていませんか?負担が大きすぎると、後輩へのフォローが手薄になり、結果としてスタッフ全体の満足度が低下してしまいます。適切にフォローすることを忘れないでください。

また、スタッフへの適切な評価は満足度に直結するものです。公正な人事評価ができる体制を整えましょう。

④人間関係

スタッフ同士の関係性が良くない場合も満足度は低下します。職場での人間関係を重視するスタッフは少なくありません。既にご存知の方も多いと思いますが、人間関係は退職理由の上位にも上がっているからです。

日頃から十分なコミュニケーションが取れている医院では、人間関係も良好な傾向があります。食事会やイベントなどのスタッフ同士の交流を深められる機会は、このような点でも役立ちます。

⑤職場環境

あなたの医院では、残業時間はどのくらいですか?もし残業が当たり前になっている場合は、スタッフの不満が大きくなっているかもしれません。できれば残業はしたくない、というのがほとんどのスタッフの本音です。近年では残業時間がほとんどないか、短い医院が増えています。また、仮に残業になった場合は「1分単位で残業代を支給する」という医院も多くなっている傾向がみられます。

スタッフにとって働きやすい環境とはどのような環境か、今一度考えてみてください。

⑥給与待遇

給与などの待遇に不満がある場合も満足度に影響します。「なぜ自分は今の給料なのか、今後何を頑張ったら報酬として返ってくるのか」これらが明確になっていなければ、スタッフからの不安や不満に繋がってしまいます。評価の基準を明確にし、院長・スタッフともに納得感のある給与設定の仕組みが必要です。

⑦福利厚生

福利厚生が活用しにくい、例えば「有給があっても実際にはなかなか取得することができない」という場合も要注意です。中には申請することはできても、先輩たちがとっていないため、後から入社してきたスタッフも結局取れないというパターンもあります。この場合は、既存スタッフを含め医院全体で見直した方が良いかもしれません。

従業員満足度はどうやって調べる?

従業員満足度を高めるためには、まず現状を知らなければなりません。実際のところ、医院のスタッフの満足度はどのような状態なのでしょうか。ここでは従業員満足度を調べるための方法として、2つの方法をご紹介します。

①アンケートによる定量調査

紙やWEBを利用して、業務内容や職場、待遇についてなど色々な項目へのアンケートに回答してもらいます。全員の満足度を聞いた上で、集計結果を分析してみましょう。

②個別面談による定性調査

スタッフ一人ひとりに個別で聞いていく方法です。従業員満足度に対する考え方や職場環境などについて、より深く聞く必要がある場合に向いています。

どちらも設問を設けて実施するものですが、必ず医院の方針や実施する目的を明確にしてから行うようにしましょう。目的に合った設問に絞ること、そして設問数が多くなりすぎないようにするのもポイントです。

調査の実施フロー

調査を実施する際は、次のような流れで行うことになります。

1.調査の実施目的を明確にする
2.アンケート項目の作成
3.アンケートの実施
4.結果を集計・分析して、改善する

調査後は結果を集計するだけではなく、きちんと分析して生かすようにしましょう。一定期間後に再度実施し、改善できたのかどうか確認することも忘れないでください。これを繰り返していくことで、あなたの医院に合ったやり方で従業員満足度を向上させていくことができるようになるでしょう。

従業員満足度を高めるために

今回は、従業員満足度の重要性や医院にもたらす影響についてご説明しました。従業員満足度を上げることには多くのメリットがあり、スタッフの定着には欠かせないものです。

今現在でも不足している歯科衛生士は、労働人口の減少により今後さらに新規採用が難しくなっていくと予想されます。毎日の診療を行う中ではなかなか時間を取ることは難しいと思いますが、できるだけ医院の体制を見直し、今から将来に備えていくことが得策かもしれません。人事評価の見直しやワークライフバランスの実現・福利厚生の充実など、できることから取り組み、スタッフが長く定着してくれる医院を作っていきましょう

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