「人事評価制度」は、従業員の頑張りやスキル、自院への貢献度を評価するために導入される制度です。
最終的には自院の業績アップや目標達成につなげるための制度ですが、従業員のモチベーション・生産性向上に向けて人事評価制度導入に取り組む院長先生や人事担当者さまも多いのではないでしょうか?
しかし、人事評価制度は導入・運用・定着するまでに時間や労力を要するため、導入したものの上手く定着せずに失敗してしまうケースもあります。人事評価制度の運用に失敗してしまうと、抱えていた課題を解決できないだけでなく、従業員のモチベーション低下や意欲低下につながってしまう危険があるため、注意が必要です。
そこで、本記事では人事評価制度の運用に失敗してしまう原因を追求し、導入成功に向けた改善方法まで徹底的に解説します。
📝この記事はこんなお悩みを解決します
- 人事評価制度が失敗してしまう理由は?
- 人事評価制度が上手く機能せず運用が進まない
- 評価基準にバラつきがあり、従業員から不満が発生している
- 人事評価制度の上手に導入する方法が知りたい
- 人事評価制度の導入事例を知りたい
人事評価制度とは?
「人事評価」とは、所属する従業員を評価し、それに見合う待遇を決定することです。
従業員の給与・ボーナスや待遇に直結するため、モチベーション向上にもつながる一方、不満が出てしまう可能性もあり、影響度の大きいセンシティブな制度です。
まずは、人事評価制度について目的やメリットをご説明します。
概要
人事評価は大きく3つの評価により構成されます。3つの評価は完全に区別されるものではなく、それぞれの評価につながっています。
- 報酬制度
- 等級制度
- 評価制度
それぞれの評価について詳しくご説明します。
報酬制度
給与・ボーナスなど、お金に関わる評価が「報酬制度」です。
役職や職種によって定められた基本給に加えて、ボーナス額などを決定します。
等級制度
従業員の成果やスキルをもとに決定される評価が「等級制度」です。
スキルや勤続年数などをふまえ、昇進や権限・責任範囲の決定をします。
評価制度
職種や役職に求められる仕事や目標への達成度・実績・勤務態度などをふまえ、総合的に決定される評価が「評価制度」です。
💡「人事考課」との違いは?
人事評価と人事考課は同じような意味合いで使用されることがほとんどです。
厳密には「人事考課」は従業員の給与・昇進などの待遇を決定するもの、「人事評価」は育成や異動などの広い範囲で判断・決定するものです。
人事評価制度導入に重要な6つの目的・メリット
人事評価制度を導入の主な目的や、自院が得られるメリットを6つご紹介します。
①従業員のモチベーション向上、労働力・生産性の向上
人事評価により、従業員の日々の取り組みや頑張りが評価され、それに見合う待遇が与えられるため、従業員のモチベーション向上につながります。
さらに従業員のモチベーション向上は、意欲的に取り組むための活力となり、労働力・生産性の向上が期待できます。
自院にとっても従業員にとっても大きなメリットです。
②医院への信頼度の向上
従業員を公平に正しく評価し、それに見合う待遇が与えられることは、医院への信頼につながります。
逆に、公平性に欠けた評価は、信頼を失いかねません。
③コミュニケーションの促進
人事評価制度では、評価者となる上司(主に院長)とのコミュニケーションが発生します。
勤務態度や成果に対してフィードバックを行うことで従業員のモチベーション向上にもつながります。
④自院理念やビジョンの浸透
人事評価制度は自院として目指すビジョンや方針・理念をもとに評価基準を定めます。
従業員は方針に沿って業務に取り組む必要があるため、自院のビジョンや方針・理念を改めて従業員に理解・認識してもらうきっかけになります。
⑤人材育成
人事評価制度によって、従業員それぞれの現状のスキルを把握することができます。
従業員に不足しているスキルや課題を判断することで、ひとりひとりに合った教育・育成に取り組むことができます。
⑥人材スキルの管理・従業員の適材適所
評価によって得た従業員それぞれの状況に応じて、適切な環境の用意や人員配置を検討することも人事評価制度導入の目的のひとつです。
人事評価制度運用に失敗してしまう7つの原因
ご紹介した通り、人事評価制度にはいくつものメリットがある一方で、制度導入・運用・定着するまでに時間や労力を要するため、導入したものの上手く定着せずに失敗してしまうケースもあります。
ここからは、人事評価制度の運用に失敗してしまう主な原因を7つご紹介します。
①人事評価に手間がかかり、途中で挫折してしまった
先ほどもお伝えした通り、人事評価制度は、導入から運用・定着まで時間や労力がかかります。
評価がブレないように、最初に明確に評価基準を定めたり、評価も従業員ごとに同時に進行しなくてはならないなど、定着までにやるべきことが多くあります。そのため、導入までなかなか上手くいかずに、重要ではあるものの人事評価制度の導入は緊急度が低いなどの理由から、途中で挫折してしまう...というケースも少なくありません。
②制度運用が定着しなかった
人事評価制度の運用を開始できても、評価者が正しい運用ができなかったり、従業員への周知が上手くいかずに運用が定着しないケースもあります。
③評価基準が不明確・曖昧だった
人事評価制度の基準を予め定めたものの、評価基準が曖昧になってしまうケースもあります。評価基準が不明確な場合、正しい評価ができず、従業員の不満につながってしまう危険があります。
④評価者によって違いが生まれてしまった
評価者が私情を持ち込んでしまい評価基準がブレてしまうことがあります。
そもそもの評価基準が曖昧・不明確であることも原因のひとつですが、評価者への正しい知識の習得や指導など、サポートが必要不可欠です。
公平性が重視される人事評価制度において、評価基準のブレがないように設計されていることが重要です。
⑤制度を導入する明確な目的がないまま進めてしまった
人事評価制度は、必ず設けなければならない制度ではありません。規模が小さく、制度を導入しなくともしっかりと従業員のスキル・状況を把握している場合など、必要のないケースもあります。
自院にとっての目的を理解せずに導入を進めてしまうと、評価基準にブレが生じ、失敗につながります。
⑥評価に見合った待遇がなかった
人事評価制度は、従業員の頑張りやスキル、自院への貢献度を評価し、それに見合った待遇を与える制度です。
評価に見合った待遇が実施されない場合、従業員のモチベーションを保つことが難しく、不満が発生しやすくなります。
⑦一部の従業員にとって不満要素となってしまった、従業員との温度差があった
人事評価制度は、従業員の理解がなければ上手く定着しません。従業員にメリットを感じてもらえるかどうかも人事評価制度の導入成功の鍵になります。
また、自院側で公平な評価が実施されていても、評価が低い従業員にとっては、不満要素となるため、一部の従業員にとってはネガティブな印象となってしまう場合があります。
人事評価制度の導入成功に向けた6つの改善方法
人事評価制度の運用に失敗してしまう原因をご紹介しました。
ここからは、導入成功に向けた改善方法を6つご紹介します。
①自院が達成したい目標を明確にし、人事評価の目的を再認識する
まず初めに、自院が達成したい目標を明確にしましょう。
自院が達成したい目標が、評価の基準となります。
②目標を達成するために従業員にやってほしいことを明確に示す
自院が達成したい目標が決まったら、目標を達成するために従業員がすべきことや行動を明確にしましょう。
人事評価制度を公平に実施するため、自院の目標と、それに伴い従業員がすべきこと・行動は従業員に周知します。評価者を含めたすべての従業員に対しての行動を定めましょう。
③継続可能なスケジュールを検討する
人事評価制度を定着させるためには、継続的に実施できる無理ないスケジュールを立てることが大切です。
評価者となる従業員の負担も大きくなるため、日次・月次などですべきことを洗い出し、関係者にも共有しながら、継続的に運用することが可能か判断しましょう。
④平等な人事評価ができる方法・制度を構築する
評価をする際に、公平な評価が実施できるように制度を構築する必要があります。
以下の5つのポイントを参考に方法を検討しましょう。
- 1)評価のタイミング
- 2)評価項目の明確化
- 3)評価項目ごとの評価基準(5段階評価 / 点数化など)
- 4)評価のフィードバック方法の明確化
- 5)評価に伴う待遇・人員配置への反映方法の明確化
⑤人事評価による待遇を検討する
人事評価の結果に見合った待遇を反映させることが大切です。
成果や成績に対しては賞与、行動やスキルに対しては給与・昇格に反映させることが一般的です。
⑥評価の際は、必ずフィードバックを行う
評価の際は、評価基準に沿って判断を行うだけでなく、評価者となる上司から従業員へフィードバックを行うなど、積極的にコミュニケーションを実施しましょう。良い評価に対して褒めることはもちろん、できなかったことに対してもアドバイスを行うなど、目標達成に向けてモチベーション維持・軌道修正を行える環境づくりが大切です。
💡Point
自院の中で構築するのは難しい...という場合は、「人事コンサルティング」や「人事評価ツール」を活用するという方法も◎専門業者の知見を取り入れることで、最短で最適な人事評価制度構築ができます!
おすすめの導入手順
人事評価では公平性を保ちながら実施することが重要です。そのため、評価方法が不公平にならないよう、ベースとなる評価基準をしっかりと構築する必要があります。
大まかな導入までのステップは以下の通りです。
- 自院のビジョンの再確認
- 評価制度を決める
- スケジュールを決める
- 評価を実施する従業員に周知
- 全従業員に周知
- 開始
歯科医院での人事制度の導入事例3選
ここからは、実際に歯科医院で人事評価制度を導入している事例を3つご紹介します。
実際の事例を参考に、自院のビジョンに合った運用しやすい方法を検討しましょう。
事例(1)人事評価制度でスキル向上
【💡Point】
- 入社から自分が何をしたら良いのか、今自分が医院から何を求められているのかが明確になっている
- 歯科衛生士としての技術面でのスキル以外にも仕事観やコミュニケーション能力などのヒューマンスキルも評価対象になるため、頑張り次第で上を目指せる
- 入社後3か月間はトレーニー期間が設けられていて、歯科衛生士業務の基本となる技術を一気に習得できる
- 人事評価表に沿って業務が進められる
※参考:人事評価制度でどんどんスキルアップ!|医院ブログ|かつらやま歯科医院
事例(2)年功序列でない個人能力評価でモチベーション向上
【💡Point】
- さまざまな業務を遂行することによりポイントがたまるスター制度、ポイントが一定でたまるとスター昇格の資格を与えられ、ランクにより役職名や給与に反映される
- 年功序列ではない人事評価制度により、組織づくり・スタッフのモチベーションアップにつながっている
※参考:スター制度(年功序列でない個人能力評価)|採用情報|エムズ歯科クリニック
事例(3)公平に評価できる仕組みづくりで制度確立
【💡Point】
- 人材育成に力を入れ、未経験から管理職を目指せる人事評価制度を導入
- 「ヒューマンスキル」「テクニカルスキル」「コンセプチュアルスキル」の3つの評価基準を設け、基準ごとにチェック項目を用意、基準や項目を細かく設定することで、業務スキルに加え、患者さまとの向き合い方や業務への姿勢も公平に評価ができる
- 定期的に上司との面談を実施し、評価基準や個人の成長度合いを認識する時間を設けている
※参考:大型歯科医院の “ウィズ歯科クリニックだから” 実現できる!スタッフの人生を豊かにする人事評価制度|社員インタビュー|ホワイトキャリア
人事評価制度をしっかり定着させて導入成功を目指す
いかがでしたか?
人事評価制度は、導入・運用・定着までに時間はかかりますが、正しく定着すれば従業員にとっても自院にとってもメリットが大きいため、ぜひ明確な目的をもって、導入成功を目指しましょう。
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