近年、学生の採用活動においてインターンシップを行う医院は増えており、その形態は多様化しています。
歯科医院においても、採用活動における母集団形成を目的としてインターンシップを開催するところが増えています。
インターンシップにはいくつかの種類がありますが、中でも学生にとって参加しやすいのが、1dayインターンシップです。
本記事では、1dayインターンシップの特徴について説明し、歯科医院で行うための内容の設計方法や具体的なプログラム例を紹介します。
1dayインターンシップとは?
1dayインターンシップとは、新卒の学生を対象にしたインターンシップの中で、1日で完結するものを指します。
1日で終わるため、開催側も準備がしやすく、最も実施されている形式のインターンシップになります。 学生にとっても参加しやすく、選考を受けなくても誰でも参加できることがほとんどです。
「1day仕事体験」への名称変更
昨今、1dayインターンシップにおいては「1日開催のプログラムで、本当に就業体験を積めるのか?」という議論が繰り返されてきました。
その結果、2022年卒採用から、1dayインターンシップは「1Day仕事体験」と名称を変え、インターンシップとは呼ばないことになりました。
就職サイト等では、「就業体験のうち、2日以上のコースを『インターンシップ』、1日のみのコースを『1day仕事体験』と呼ぶ」と説明しています。
本記事では、従来の「1dayインターンシップ」という表記を使用いたします。
1dayインターンシップの内容
1dayインターシップは主に3つの種類があります。
1.セミナー型
歯科業界や医院の説明、働き方について説明を行います。
先輩スタッフとの座談会が用意されている場合もあります。
2.職場見学・体験型
実際に医院内を見学したり、少し業務を体験したりします。 学生にとって、業務のイメージが明確になるほか、職場の雰囲気がわかるようになります。
医院のリアルな内情を見られるのは、学生にとって貴重な体験になるでしょう。
3.ワークショップ型
学生同士でグループを組み、与えられた課題に対してディスカッションやワークを行います。
歯科業界を目指す学生同士がさまざまな意見を交換することで、業界や仕事内容の理解をより深めてもらうことができます。
医院側にとっても、学生の性格や思考を見ることができるので、優秀な学生を見極めるのに良い機会です。
歯科医院が行う歯科衛生士向けのインターンシップは、職場見学を実施する場合が多いです。
よって、基本的には「職場見学・体験型」をベースにプログラムを考えるとよいでしょう。
1dayインターンシップのメリット
1dayインターンシップを開催するメリットについて、医院側・学生側の視点にわけて説明します。
医院側のメリット
①運営工数を抑えられる
1dayインターンシップは、中長期のインターシップに比べて、コストや手間をかけずに手軽に実施できる点が最大の魅力です。
一部のスタッフだけで完結させられる部分も多く、現場との調整やリスク対応なども最小限に抑えることができるでしょう。
②多くの学生と接点を持てる
準備の負担が少ない分、実施回数を増やせるため、多くの学生に出会うことができます。
よって採用活動における母集団形成に効果的です。
一方で、1日で多くの学生に興味を持ってもらえるような内容を考えることが重要です。
③中長期インターンシップに繋げられる
1dayインターンシップで接点を持った学生を中長期のインターンシップに繋げるという活用法があります。
1dayインターンシップで関わった優秀な学生や興味を示した学生にインターンシップ後もフォローを行うなど、接点を保つようにすることが重要です。
④若手スタッフのモチベーションが上がる
1dayインターンシップは、若手スタッフが担当するケースも多いです。
学生と接することで入職当初の頃の気持ちを思い出す機会になります。
業務に慣れてきた頃に、歯科業界を目指す学生と接することで、日常業務とは異なるモチベーションを持つことができるでしょう。
学生側のメリット
①時間を取りやすく、参加のハードルが低い
1日空いている日があれば参加できるため、学業との両立で忙しい学生にとって時間を取りやすいのは魅力です。
また、1dayインターンシップは選考がないことがほとんどのため、学生にとって負担が軽く参加のハードルが低いというメリットもあります。
気持ちの面でも気軽に参加できるのは大きいでしょう。
②短い時間で働く人や職場の雰囲気を知ることができる
実際に自分の目で見た情報を得られるのはインターンシップの魅力です。
たった1日だけ職場を訪問するだけでも、そこで働く人や職場の雰囲気を読み取れるでしょう。
また、複数のインターンシップに1日ずつ参加するだけでも直感的に医院の比較ができます。
比較されたときに自分たちの医院の方が良かったと思ってもらえるためにも、1日で自院の強みを伝えられるような内容を考えることが大切です。
③歯科業界の社会人と出会える
自分が目指す歯科業界について、実際の現場で働くスタッフからリアルな声を聞ける良い機会となるでしょう。
また、座談会などにより、採用プロセスの中では質問しにくいようなことも気軽に話せるのは学生にとって貴重な場です。
④他の就活生と出会える
他の学校の学生と情報交換をしたり交流したりできるメリットがあります。
1dayインターンシップを通して歯科業界を志望する仲間ができることで、仕事をするモチベーションも上がるでしょう。
1dayインターンシップのデメリット
1dayインターンシップは、期間が1日と短いことからデメリットもあります。
医院側のデメリット
①学生の期待に応える内容にするのが難しい
時間が短いため、「学生が求めているものに十分応えられない」「職業体験ができたという実感を持たせることができない」といったデメリットがあります。
そのため、興味を持ってもらった学生には、中長期のインターンシップに繋げたり、SNSなどで長期的なコミュニケーションをとったりすることで、職場体験や職場理解をより深めてもらうとよいでしょう。
②コミュニケーションが希薄になる
短い時間で多くの学生と出会える半面、一人ひとりとのコミュニケーションが希薄になる可能性があります。
参加者全員としっかりコミュニケーションを取れるプログラムになっているかを意識しましょう。
また、内容によっては少人数での開催にするなど、参加人数の検討も鍵となります。
学生側のデメリット
①実務スキルがつかない
1dayインターンシップでは、実務スキルを身につけることはできません。
一部の業務体験ができたとしても、時間が短いため、その業務が自分に向いているのかを判断することは難しいでしょう。
1dayインターンシップの設計方法とポイント
次に、1dayインターンシップのプログラムの作り方をご説明します。
インターンシップの要件を5W1Hにまとめる
1dayインターンシップのプログラムは、要件を5W1Hにまとめてから組み立てるとよいでしょう。
目的を決める(WHY)
「多くの学生に参加してもらい、採用活動における母集団を増やしたい」
「中長期型インターンシップに向けたマッチングを行いたい」
「いまの学生と関わることで、本採用のヒントにしたい」
など、1dayインターンシップを開催する目的は医院によって異なります。
目的によってプログラムの内容も変わってきますので、まずはインターンシップを開催する目的を明確にしておきましょう。
医院が求める人物像を明確にする(WHO)
「地元で腰を据えて長く働きたい学生」
「特に矯正歯科に関心のある学生」
など、採用したい学生像の言語化を行っておきましょう。
学生に伝えたい内容を検討する(WHAT)
プログラムの内容は、採用ターゲットを踏まえた上で、「医院の強み」と「学生のニーズ」をベースに考えます。
両者が交わるポイントはどこかを考えることが重要です。
開催形式(場所)や実施方法を決定する(WHERE・HOW)
伝えたい内容を踏まえて、インターンシップをどのような形式(場所)・方法で行うかを決めます。
歯科衛生士向けのインターンシップは職場見学や体験を実施する場合が多いため、現場の確認やスタッフの人員確保が必要となります。
日程・タイムスケジュールの決定(WHEN)
開催日程を検討する際は、学生のスケジュールや他医院の動向を把握しながらスケジュールを組みます。
開催する回数も目的から逆算して設定するとよいでしょう。
プログラム内容は学生のニーズから逆算する
プログラムの内容を学生のニーズから逆算して設計すれば、多くの学生に興味を持ってもらえる可能性が高まり、参加した学生の満足度も高まるでしょう。
インターンシップに対する学生のニーズ及びそれに対する実施内容としては、以下のようなことが挙げられます。
- 働く人の雰囲気を見たい
→「現場見学の実施」「スタッフミーティングへの参加」
- 先輩衛生士と話がしたい
→「座談会の実施」「昼食をスタッフと一緒にとる」
- 自分がここで働く姿をイメージしたい
→「業務体験の実施」「ブラッシング指導やロールプレイングの実施」
- どんなことが学べるかを知りたい
→「取得できる資格の紹介」「参加セミナーの実績紹介」
※費用補助などの福利厚生があれば一緒にご案内しましょう。
歯科医院におけるプログラム例
最後に、歯科衛生士の1dayインターンシップのプログラムについて、具体的なスケジュール例をご紹介します。
スケジュール例
9:15 集合、更衣
スタッフと同じ制服を着て1日を過ごしてもらいます。
9:30 全体の説明
医院のルールや施設の説明、歯科衛生士の業務内容について説明を行います。
10:15 ミーティングへの参加
実際のスタッフミーティングに参加してもらいます。
ミーティングの目的についても説明します。
10:30 見学
各設備及び診療現場を見学します。
また、各症例について治療の説明を行います。
12:00 業務体験
結紮など、歯科業務の一部を体験してもらいます。
13:00 昼食(懇親会)
スタッフと一緒に昼食をとります。
医院側で用意してもよいですが、実際の現場ではお弁当を作って持参するスタッフも多いため、各自持参としてもらう場合もあります。
昼食を各自で持参してもらうことで、スタッフとのおしゃべりの話題にもなるでしょう。
14:30 グループワーク(ブラッシング指導計画の作成)
1~2種類ほど症例を挙げ、初診の説明を受けた後、実際にブラッシング指導計画の作成を行ってもらいます。
作成後はスタッフにてフィードバックを行います。
16:30 質疑応答
1日の感想や気づきを共有し、学生から聞きたいことを質問してもらいます。
質問には院長やスタッフが回答します。
17:00 終了
中長期インターンシップや採用に関するお知らせなどがあれば、最後に共有します。
25卒から1dayインターンシップのルールが変わる?
今までの就活ルールでは、学業が疎かにならないようにインターンシップを採用に直結させることは禁止されていました。 しかし、年々就活が早期化していて、多くの企業がインターンシップを導入しています。 参加した学生がその企業に応募するケースが増えているため、就活ルールを現代に合わせたという流れになります。
2022年度までは1day、短期、長期の3種類のインターンシップがありましたが、上記のルール変更に伴って4つの種類に分類されるようになりました。
- タイプ1…オープンカンパニー
- タイプ2…キャリア教育
- タイプ3…汎用的能力・専門型インターンシップ
- タイプ4…高度専門型インターンシップ
これまでの1dayインターンシップは「オープンカンパニー」という新しい名称になります。 内容はこれまでとほとんど変わりませんが、学生の参加対象が3・4年生から全学年へと変わります。
1dayインターンを活用して歯科衛生士の採用成功に繋げましょう
1dayインターンシップは、できるだけコストを抑えて多くの学生と関わることができる良い機会です。 これまで実施していなかった医院さんでもぜひ活用して、新卒採用に取り入れてみてください。
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