歯科衛生士になるためには、歯科衛生士国家試験を受験して合格しなければなりません。
また、歯科衛生士国家試験の受験資格を得るためには、高校卒業後に専門学校、短期大学、大学などの歯科衛生士養成機関を卒業する必要があります。
現状、歯科衛生士の需要は高く、採用に四苦八苦している歯科医院は多いでしょう。
そのため、歯科衛生士養成機関の学費などに対する奨学金制度を導入する歯科医院が増えています。
本記事では、歯科医院が奨学金制度を導入するメリットデメリットや、導入事例について解説していきます。
奨学金制度とは?
奨学金制度とは、いろいろな機関などが学生に対して、学費や生活費を貸与したり援助したりする制度のことです。
奨学金には、返済が必要な貸与型と返済の必要のない給付型があります。
また、奨学金には、国、都道府県、市町村などが行政施策として行っている公的奨学金と、民間が行っている民間奨学金とがあります
歯科衛生士の奨学金制度とは?
歯科衛生士の奨学金制度とは、歯科衛生士になるための専門学校、短期大学、大学などの歯科衛生士養成機関の学費や生活費などを貸与や援助をする制度です。
歯科医院が歯科衛生士の奨学金制度を運営しているケースも多く、学校卒業後に歯科衛生士として一定期間その歯科医院に勤務することを条件に返済を免除するなどとしています。
一般的には、貸与額に応じた年数勤務することを条件に返済を免除している歯科医院が多いですが、中には給与から貸与額を返済することを条件としている歯科医院もあります。
一方、奨学金の貸与額を返済していけば、その歯科医院に勤務せずに勤務先を自由に選んでも構わないとしているところもあり、医院によってそれぞれです。
歯科衛生士になるための費用
歯科衛生士になるためには、国が定めた歯科衛生士養成機関を卒業して歯科衛生士の受験資格を得なければなりません。
この歯科衛生士養成機関には、最低3年以上通わなければならないため、かなり大きな費用がかかります。
歯科医院が奨学金制度を導入して、歯科衛生士養成機関にかかる費用の一部または全額を奨学金として学生に援助することで、不足がちな歯科衛生士を確保することができるのです。
歯科衛生士養成機関ごとの学費の比較
歯科衛生士になるためには、最低3年歯科衛生士養成機関に通い、国が定めたカリキュラムを修了しなければなりません。
そのため、3年生の専門学校に通う方もいれば、3年制の短期大学や4年制の大学に通う方もいます。
以下の表は、歯科衛生士養成機関ごとの学費の比較です。
入学金 | 1年間の授業料、教材費、実習費等 | 卒業までの費用 | |
3年生の専門学校 | 約10万円〜30万円 | 約100万円〜150万円 | 約300万円〜400万円 |
3年制の短期大学 | 約10万円〜30万円 | 約150万円 | 約350万円〜450万円 |
4年制の大学 | 約10万円〜30万円 | 約150万円 | 約500万円〜600万円 |
卒業までの費用は、3年生の専門学校で約300万円〜400万円、3年制の短期大学で約350万円〜450万円。4年制の大学で約500万円〜600万円かかります。
歯科医院における奨学金制度の導入
歯科衛生士の受験資格を得るためには、専門学校、短期大学、大学などの歯科衛生士養成機関に通って国が定めたカリキュラムを修了しなければなりません。
歯科衛生士養成機関に通うためには学費などの費用がかかるため、奨学金制度を導入して学費の貸与や援助を行う歯科医院が増えています。
本項では、歯科医院が奨学金制度を導入するメリットやデメリットについて解説していきます。
歯科医院が奨学金制度を導入するメリット
歯科医院において奨学金制度を導入するメリットは、以下になります。
・不足している歯科衛生士を確保できること
現状では歯科衛生士が不足していて、困っている歯科医院が増えています。
歯科衛生士の不足は、歯科医院の運営にもつながりますので深刻な問題です。
歯科医院が採用を条件に奨学金を支給することで、不足している歯科衛生士を確保することができます。
・歯科医院のイメージアップになること
奨学金制度を導入していることを採用情報などに記載することで、歯科衛生士に対して支援している医院であることがわかるため歯科医院のイメージアップにつながります。
歯科医院が奨学金制度を導入するデメリット
歯科医院が奨学金制度を導入する場合には、メリットばかりではありません。
以下のようなデメリットもあるため、よく検討することが必要です。
・採用ができても定着しない可能性があること
奨学金の条件として一定期間勤務しなければならないとしていても、一定期間が終了したら他の歯科医院に転職する可能性があります。
初めから転職を目的として奨学金の申し込みをする場合もありますので、注意が必要です。
・初期費用がかかること
奨学金制度の導入により将来歯科衛生士を採用できたとしても、奨学金を支払うための初期費用がかかります。
後から回収できるように奨学金の設計をしていたとしても、回収するまでに時間を要しますので注意が必要です。
歯科医院が奨学金制度を導入する流れ
歯科医院が奨学金制度を導入する例として、以下の流れが考えられます。
・奨学金制度の導入の検討
奨学金制度を導入するメリットやデメリットなどを考慮して、奨学金制度を導入するかを検討します。
・奨学金制度の設計
奨学金制度を導入することが決まったら、どのような奨学金制度にするかを検討します。
検討事項は、支給金額、支給人数、返済方法などです。
また、貸与型にするのか給付型にするのかや、卒業後の就職を条件にするのかなどを決めていきます。
・奨学金制度の導入
奨学金制度の設計ができましたら、実際に奨学金制度を導入していきます。
歯科医院における奨学金制度の導入事例
ここでは、歯科医院における奨学金制度の導入事例を見ていきます。
A歯科医院の場合
A歯科医院では、主に高校生を対象に3年間の歯科衛生士養成機関の授業料などに対する奨学金のプランを用意しています。
月額46,000円×36か月で、3年間の奨学金額168万円を支援するプランです。
支援条件として、歯科衛生士養成機関を卒業後A歯科医院へ就職し、5年間勤務することで返済義務を免除します。
B歯科医院の場合
B歯科医院では、主に在学中の学生を対象に3年生の1年間だけの奨学金のプランを用意しています。
月額38,000円×12か月で1年間の奨学金額45万6,000円を支援するプランです。
支援条件として、歯科衛生士養成機関を卒業後B歯科医院へ就職し、3年間勤務することで返済義務を免除します。
歯科衛生士養成機関を卒業後にB歯科医院へ就職しなかった場合は、毎月3万円〜5万円の範囲で支援した金額分を返済することになります。
C歯科医院の場合
C歯科医院では、3年間C歯科医院で働くことを条件として、D歯科衛生専門学校の学費をサポートする奨学金を用意しています。
奨学金額は、学費などの全額、または希望額を貸与し、C歯科医院で3年間働くことを条件に貸与額の半額を返済する奨学金制度です。(貸与額が学費の半額以下の場合は、返済不要です。)
返済は入社後の給与から毎月3万円ずつの支払いとし、貸与期間中、および返済期間中は無利子です。
日本学生支援機構の奨学金返還支援制度
奨学金制度を導入するためには、奨学金を支払うための費用が必要です。
自医院で奨学金制度を導入できない場合には、日本学生支援機構の奨学金返還支援制度を利用する方法があります。
日本学生支援機構の奨学金返還支援制度とは、歯科衛生士などのスタッフが日本学生支援機構から貸与された奨学金の返還残額を歯科医院などが日本学生支援機構へ直接送金する制度です。
この制度を利用すれば、自医院で奨学金制度を導入できなくても歯科衛生士が奨学金を返済する負担の軽減が図れます。
まとめ
このように、歯科医院が奨学金制度を導入することで、福利厚生の充実が図れて歯科衛生士を採用することができます。
また、歯科医院のイメージアップにもなり、歯科衛生士の採用にもつなげることが可能です。
費用の関係で奨学金制度を導入することが難しい場合でも、日本学生支援機構の奨学金返還支援制度があります。
奨学金制度の導入や奨学金返還支援制度は、歯科衛生士や歯科衛生士を目指している方への大きなPRになります。 奨学金制度の対象に応じてPR先が変わってくるので、PR先に向けた内容を発信することが大切です。
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♦︎この記事の監修者
♢ 小島 章彦 (こじま あきひこ)
社会保険労務士
信用金庫に8年、システム開発の会社に現在まで20年以上勤務。
社会保険労務士・行政書士の資格を保有し、人事労務関係、社会保険関係の記事を中心に7年以上執筆活動を続けている。最近では、労務関係の記事の監修作業も行っている。
2001年 | 社会保険労務士資格取得 |
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2002年 | 行政書士資格取得 |
2017年~ | 社会保険労務士や行政書士の資格を生かして法律系webライターとして、社会保険、労務関係、その他の法律などを中心に執筆活動をしている。 |