人事評価制度の種類を詳しく紹介!医院&スタッフ双方に有益な評価制度を運用しよう

人事評価

今よりも医院を反映させたいとお考えの先生方、今現在人事評価制度を導入されていらっしゃいますか。既に取り入れている場合、それは医院にとって有益なものとなっているでしょうか。

人事評価制度はただ制度を設けるだけではなく、医院やスタッフ双方にとって有益なものでなければ、せっかく導入しても意味がなくなってしまいます。

今回は、人事評価制度をこれから導入しようとお考えの先生や見直しを検討されている先生方に向けて、評価制度の種類について詳しくご紹介いたします。ぜひ参考になさってください。

人事評価制度とは

人事評価制度は、スタッフの能力や貢献度・業務の遂行具合などについて、予め定めている評価制度により一定期間ごとに評価し待遇に反映させるというものです。

人事評価制度は、医院の理念や方針に沿って決められた基準に沿って行われます。そのため制度を設けておくことで、医院の考え方や方向性についてスタッフの理解を得やすくなるという点もメリットだといえるでしょう。実施する期間の間隔は医院によって異なりますが、半年や1年ごとに行う場合が多くあります。

人事評価制度の目的

人事評価制度には、主に次のような4つの目的があり、これらを遂行できるような制度を設けることが大切です。

①医院の方針を伝える

人事評価制度の内容は医院の方針や理念に基づいて決定されるため、スタッフに医院の考え方などを伝えることもできます。

②スタッフのモチベーションアップに繋げる

誰でも、努力したことや成果を出したことについては認めてもらいたいものです。反対にいくら頑張っても評価されないと感じると、モチベーションは低下してしまうのではないでしょうか。

人事評価制度によってスタッフの能力や成果を目に見える形で反映させることは、スタッフのモチベーションを向上させる上で必要不可欠だともいえるでしょう。

③待遇決定の根拠にする

予め設定した評価項目に沿って評価をすることで、待遇を決定する際の根拠にすることができます。評価項目をスタッフに理解してもらった上で実施することで、待遇に納得してもらいやすくなります。

④スタッフの育成に活用する

人事評価制度を行うことで、スタッフの強みや弱点、得意不得意な面なども浮き彫りになります。今後どのような目標を立てて達成を目指すかなど、個々のスタッフと話し合うことで、成長を促すこともできます。

人事評価制度の3つの要素

人事評価制度の目的をお分かりいただけたところで、その構成について詳しく考えていきましょう。人事評価制度は「評価制度」「等級制度」「報酬制度」の3つの要素から構成されており、それぞれが影響し合っています。どれか1つの制度が変われば、他の制度にも影響を及ぼすという関係です。

まずはこの3つの要素をしっかりと理解しておいてください。1つずつ解説していきます。

①評価制度

評価制度とは、医院の方針や方向性を元に評価項目や方法・基準・タイミングを定め、それに対しての行動や成果を評価するものです。その結果に基づいて待遇の決定をしていきます。また評価制度には次のような5つの原則があり、これらに沿って評価を行うことがポイントになります。

《評価制度の5つの原則》

  • 公正な評価・・・偏った評価が生じることなく、人事評価制度の目的を達成できるように運用する。
  • 評価基準の明確化・・・「何が評価されるのか」「何をしたら評価されるのか」を、スタッフ全員が明確に把握できるようにする。
  • 評価基準の理解・・・スタッフ全員に評価基準が理解されるようにする。
  • 評価基準の遵守・・・評価基準に基づいた評価をする。
  • 評価責任の自覚・・・評価結果がスタッフのモチベーションや成長に影響を及ぼすことを自覚した上で評価を行う。

②等級制度

スタッフの能力や功績に基づいて、役割や立場を決める制度のことです。それぞれの役割・立場に応じた目標や権限を示し、等級ごとに定められた目標を達成できるようにスタッフは活動をします。
等級制度では「何を基軸(中心)とするか」が最も重要だと言われています。等級制度の基軸は「能力・職務・役割」の3つとされており、それぞれ「職能資格制度」「職務等級制度」「役割等級制度」といった制度がそれに当たります。

《3つの等級制度》
・職能資格制度
スタッフの能力を基軸にして区分する等級制度です。職務や成果を必要とせず、能力によって決定されるため、職務内容を変更することもできます。
しかし成果によって左右されることがないため、過小払いや過剰払いの生じる可能性や年功序列に陥りやすいというデメリットもあります。また一度昇格すると、成果が出ていなくても降格させることはできません。

・職務等級制度
職務を基軸にしてスタッフを区分します。より高度な職務に就くことで待遇が向上する制度のため、スタッフが一つの分野を極めるよう促せるでしょう。しかし大きな成果を出したとしても、職務が変わらない限り給与がアップするわけではないため、不満が生じてしまう可能性もあります。

・役割等級制度
スタッフの役割を基軸にした制度です。スタッフそれぞれが個々の役割を元に目標を設定し、その達成度によって待遇が決まります。スタッフ自身が深く関わるため自主性が求められますが、納得してもらいやすい制度ともいえるでしょう。
医院の状況に合わせて役割を調整する必要があるため、導入時は少し大変かもしれません。

③報酬制度

評価制度や等級制度による結果を反映し、一人ひとりのレベルに合わせた報酬にするための制度です。評価制度や等級制度との連動性を考慮して設ける必要があります。

《報酬制度の3つの原則》

  • 内部公平性の原則・・・スタッフ全員に公平な報酬の決定をする
  • 個人間公平性の原則・・・評価や報酬の決定は、全てのスタッフにとって公平に行う。
  • 外部競争力の原則・・・他院と比較して優位な給与水準に設定することにより、優秀な人材の確保と定着を促す。近隣の医院や競合となる医院を参考に検討する。

ここまで人事評価制度の3つの要素について詳しく解説してきました。次の項では、実際に評価を行う際に役立つ手法についてご紹介していきます。

人事評価制度の4つの手法

人事評価は個々の能力スキルや成果、勤務態度などを元に行いますが、それを補うものとなる手法があります。ここでは、主な4つの手法についてメリット・デメリットを交えて説明いたします。より良い評価制度を実施するための参考にしてください。

①目標管理制度(MBO)

MBOとはドラッガーが提唱した組織マネジメントの一つで「Management By Objectives」を略したものです。スタッフ自身が自分で目標を決め、その目標をどれだけ達成できたかにより判断する評価方法になります。

できるだけ目標は細かく決め、期限を定めることがポイントになります。また設定した目標をしっかり共有しておくことも大切です。

《メリット》

  • 医院の目標達成や貢献に繋げることができる
  • 具体的な目標を設定することで、評価がしやすくなる
  • 目標の共有により、スタッフが医院に貢献していることや納得感を感じやすくなる
  • 目標を明確にできるため、モチベーションの向上に繋がる
  • スタッフの自主性や問題解決能力を育てることができる​​

《デメリット》

  • 定期的に内容を見直す必要がある
  • 目標を話し合うための時間を要する

②360度評価(多面評価)

院長だけではなくチーフや同僚など複数の人によって、あらゆる角度から判断し評価する方法です。

《メリット》

  • スタッフの納得を得やすい
  • より多くの評価を聞くことができる機会になる

《デメリット》

  • 人によっては複数の人に評価されることをよく思わない可能性がある
  • 評価のために院長以外の人の時間も必要となる

③コンピテンシー評価

「コンピテンシー」とは「高い成果を上げるための行動特性」を表しています。成果を出しているスタッフをモデルとしてその行動特性(コンピテンシー)を元に評価項目を設定し、評価する方法です。

《メリット》

  • 具体的な評価設定をしやすい
  • 優秀なスタッフをモデルとすることで、組織の底上げにも繋がる
  • 行動特性を客観的に分析することができる
  • スタッフの弱みを把握できるため指導にも役立つ
  • 相性などによるブレを抑えられる​​

《デメリット》

  • 誰でも客観的な評価ができるとは限らない
  • 職場の雰囲気や人間関係に影響を及ぼす可能性がある

④バリュー評価

医院の方針や理念に基づいて評価項目を設定し、評価する方法です。「行動評価」や「プロセス評価」とも呼ばれます。

《メリット》

  • 医院の方針や方向性を伝えることができる
  • 院内の連携が取りやすくなる
  • 組織力の強化に繋がる

《デメリット》

  • 客観的な評価が難しい
  • スタッフが医院の方針などを十分に理解していないと評価に繋がらない可能性がある

このように人事評価制度の手法には様々なものがあり、それぞれにメリット・デメリットがあります。特徴を十分に理解した上で、どの手法を採用すれば有益な評価制度を行うことができるのか検討してみてください。

人事評価制度を行う際の注意点

人事評価を公正に行うべきだとわかっていても、人間ですから実際に評価する立場となると難しいこともあると思います。こちらの項では、人事評価を行う際のポイントをあげていきます。

人事評価エラーが起きないようにする

評価者の価値観・好き嫌いや心理状態などによって、主観が入ってしまうことがあります。個人的な付き合いや経歴、推論など、業務や評価項目に関係のないことで評価してしまうことがないよう十分に注意しなければなりません。

仮に評価した本人にそのつもりがなかったとしても、主観が入ってしまったことはスタッフに伝わってしまうものです。スタッフがそう感じた場合、やる気や上司への信頼をなくしたり、退職を考えたりすることも珍しくはありません。慎重に評価を行うようにしましょう。

人事評価後のフィードバックやフォローは必ず行う

人事評価を行った際は、必ずフィードバックをしましょう。「なぜその評価になったのか」スタッフが理解できるよう説明することで、評価に納得してもらいやすくなります。また今後の目標や改善点などを話し合うことで新たな目標設定もできるため、モチベーションの向上にも繋がります。

実際にフィードバックを行った場合と行わなかった場合では、スタッフの納得度も変わってきます。評価できる点は褒めたり感謝の言葉を伝えるようにし、改善すべき点は前向きなアドバイスと一緒に伝えるようにしてください。ちょっとしたことかもしれませんが、褒められて嬉しくない人はいません。多忙な毎日の中で時間を割くことが勿体ないと感じてしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、未来への投資と考え必ず行うようにしましょう。

スタッフに納得してもらえる人事評価制度を行う

評価結果がスタッフの納得を得られるものであるかどうかということは、とても重要です。スタッフの納得が得られない評価では、モチベーションを大きく低下させてしまう可能性が大きいからです。

スタッフ自身が医院にいる存在価値を感じられるような評価制度があると、スタッフの定着率アップや医院の繁栄にも繋がると思います。

まとめ

今回は人事評価制度とはどのようなものなのかや、その手法について詳しく解説しました。人事評価制度は、医院やスタッフを成長させるか否かにも大きく関わってきます既に行っている先生方はもちろん、これから導入されるご予定の方もぜひ今回の記事を参考に有益な人事評価制度の運用を行なってください。

歯科医院の人事制度についてさらに詳しく知りたい先生、導入について相談したい先生はぜひお問い合わせください。

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