歯科医院向け採用セミナー

【歯科業界の動向】今後の予測と医院の課題を解説

その他

近年、人口減少や少子高齢化、治療ニーズの変化など、歯科業界を取り巻く環境は大きく変化しています。
これまでの成功事例が通用しなくなってきて、今後の経営について悩まれている理事長・院長先生も多くいらっしゃるかと思います。

本記事では、歯科業界の動向を「医院経営」「治療ニーズ」「歯科医療従事者」の面から紹介します。
さらに、歯科業界の今後の予測とそれを踏まえた歯科医院の課題・対策について解説します。

歯科医院経営の動向

歯科医師数が歯科医院数以上に増加

2023年3月時点で、歯科医院の施設数は67,431施設となっています。(※1)
コンビニの店舗数が55,739店舗ということを踏まえると、かなり多いといえます。(※2)

※1 厚生労働省 医療施設動態調査(令和5年3月末概数)
※2 JFAコンビニエンスストア統計調査月報(2023年4年度)

一方、歯科医師数は歯科医院以上に増加しています。

1960年~1970年代にかけて、歯科医師不足の問題から歯学部や歯科大学が新設されたことにより、日本の歯科医師数は一気に増加することとなりました。
以降、歯科医師の数は年々増加しており、ここ10年は10万人を超えています。

数値で見ると歯科医院・歯科医師の数はかなり多いですが、日本全国どこでも歯科医院・歯科医師が十分に足りているわけではありません。
都市部では供給過多である一方、ある地方では歯科医院がゼロというところもあります。

この背景には、開業場所を慣れ親しんだ場所で決めようとする姿勢が大きく影響しています。

現在、供給過多の都市部では競争が激化し、一定数の患者を確保できない歯科医院も増えているのが現状です。

歯科医師の目線ではなく「患者さの目線」で開業を考えるべき時代になったことがポイントです。

歯科医院の大規模化・集約化

昨今、働き方の多様化により、勤務医の継続や非常勤を選択する歯科医師が増加しています。
また、院長の高齢化や後継者不在といった医院も多くみられます。

これらの要因により、個人歯科医院が減少し、医療法人が増加しております。
20年前の個人歯科医院と医療法人の比率は9:1でしたが、現在は8:2となっており、歯科医院の大規模化・集約化が進んでいるといえます。

人口減による医院の競争激化

人口の減少に伴い、歯科医院の患者数は減少しております。
今後日本の人口はますます減少すると予測されるため、供給過多なエリアにおいて、患者の獲得はさらに競争が激化するでしょう。

一方、人材獲得においても競争が激化するため、人手不足に悩む医院も増えている現状です。

保険診療だけでは厳しい状況

医科・歯科を問わず国民医療費は年々増加していますが、医療費に占める歯科医療費の比率は年々低下しています。
また、1件あたりの診療報酬点数も減少傾向にあることから、保険診療のみで収益を上げることが難しくなってきています。

一方、歯科医院における自費診療の割合(自費率)は近年増加傾向にあります。
患者さまのニーズも、「安さ」ではなく「お金を払ってでも質の良い治療を受けたい」というものに変わってきています。

よって、安定した売上げ確保のためには、自費診療をどれくらい取り入れられるかが鍵となるでしょう。

歯科治療ニーズの動向

虫歯罹患率の減少

昔から歯科医院の主な利用目的は「虫歯の治療」でした。 しかしながら、予防ケアの普及や歯科検診の充実化などにより、虫歯になる人の数は年々減少しています。
現在は、治療目的よりも、虫歯や歯周病にならないための「予防」で通院する人が増えています。

需要が高まっている治療分野

日本人の口腔内の健康状態が着実に改善している中、ニーズが高まってきている治療分野を以下に4つ紹介します。

①予防歯科

現代において、歯科医院の役割は、虫歯の治療から予防処置へシフトしています。
予防歯科の促進は、患者さまの継続的な来院に繋がりやすいため、経営安定化の観点からも取り入れる価値は高いでしょう。

②審美歯科

近年、「歯を白くしたい」「目立つ銀歯を無くしたい」「歯並びを治したい」といった歯に対する審美ニーズが高まっています。
これは、SNSで写真をアップして共有する時代になったことで、口元を気にされる方が増えてきたことが一因といえます。

なお、審美歯科における患者さまのニーズは様々で、「とにかくより白い歯を希望する患者さま」「補綴はできるだけ持ちが良い物を希望する患者さま」など一人ひとりの要望にあった治療を行うことが必要です。
その場合、保険診療の範囲では使用できる素材が限られるため、多くの患者さまの要望に応えるためには、自費診療を取り入れ、歯科補綴物の選択肢を増やすことが必要です。

③マウスピース矯正

歯列矯正においては、主流のマルチブラケット装置と比べて目立たず気軽に矯正できることから、マウスピース矯正のニーズが高まっています。

特に、米国のアライン・テクノロジー社が開発した「インビザライン」は、世界中で患者数が増加しており、日本でも症例数が伸びております。

④高齢者歯科・訪問歯科

日本の人口は減少していますが、65歳以上の人口は増加すると予測されているため、高齢者に対する補綴治療や歯周疾患治療などは引き続き高いニーズが見込めます。

また、加齢による足腰の不調などで通院が困難という患者さまも増えているため、訪問歯科も成長領域になります。
訪問歯科は、歯科治療を在宅で受けられるということで、身体の不自由な患者さまの安心感にも繋がっています。

歯科医療従事者の動向

先述したように歯科医師の数は年々増えていますが、歯科医療従事者全体としては慢性的な人手不足に陥っています。

歯科衛生士

一般社団法人 全国歯科衛生士教育協議会によると、2021年度時点での歯科衛生士の有効求人倍率は22.6倍です。
これは22件の歯科医院が1人の歯科衛生士にアプローチしているという状況であり、超売り手市場といえます。

また、歯科衛生士は転職経験率も約70%と高いため、人材確保に苦戦する歯科医院も少なくありません。

歯科助手

厚生労働省の「医療施設調査」によると、1996年には10万人以上の歯科助手が存在していましたが、2017年には約7万人まで減少しており、こちらも人材確保が難化しています。
歯科助手は無資格でも従事できますが、その業務は多岐にわたるため、相応のスキル・経験を持った人材が必要となります。

歯科技工士

歯科技工士に関しては、若手の志望者が少なく、他の職種と比べて離職率が高い傾向があります。(離職理由のトップは給与・待遇面です)
よって、他の業界と比べて高齢化が進んでいるのが課題です。

また、新卒の有効求人倍率は10倍以上で、こちらも売り手市場が続いています。

歯科業界の今後の予測

昨今の動向を踏まえた上で、歯科業界の未来を予測してみます。

1. 経営面

①さらなるM&Aの増加

歯科業界におけるM&Aには、売り手側・買い手側ともに多くのメリットがあります。

多くの歯科医院が悩んでいる「競争力の強化」「新たな治療ニーズへの対応」「歯科医療従事者の人材確保」などの経営課題は、M&Aによってまとめて解決できるため、今後もM&Aによる歯科医院の大規模化・集約化は増加すると予想されます。

②自己負担金の引き上げと自由診療の拡大

人口減少がかなり進むと、保険診療にも大きな改革が必要になってきます。
海外先進国の事例から予想して、少なくとも自己負担金が5~7割程度に引き上げられる可能性が高いです。
また、自己負担金の負担率上昇と合わせて、自費診療を拡大する医院も増えていくでしょう。

2. サービス面

①サービス業的側面の増加

自分の住む地域に複数の歯科医院がある場合、患者さまは治療そのものだけではなく、利便性や接客対応などのサービス的側面にも着目して通院する医院を選んでいます。
今後も他の医院との差別化のために「WEB予約の導入」「早朝や夜間の診療」「キッズスペースの確保」など、歯科医療のサービス業的側面が増加することが予想されます。

②専門性の高い医院の増加

歯科医院の競争激化により、予防歯科・訪問歯科・審美歯科・矯正歯科など、各専門分野に特化した診療を行う歯科医院が増加していくことが予想されます。

専門性が高くて信頼できる医院には、遠方からでも通院したいと思う患者さまも多いです。

③アクティブシニアの増加

仕事や趣味に意欲的で、健康意識が高い活発な高齢者(アクティブシニア)は、健康への出費を惜しまない特徴を持っています。

今後アクティブシニアはさらに増えるため、この層のロイヤリティ向上のために、高齢者を中心とした食育や口腔ケア活動を取り入れる医院も増えるでしょう。

3. 雇用面

①人口減で人手不足がより深刻になる

既に歯科医療従事者が人手不足な状況ですが、人口減によって人材獲得はますます難化します。

そのため、多くの歯科医院が今まで以上に採用に力を入れていくと予想されます。

優秀な人材を確保するためには、他医院に劣らないような良い条件を提示していくことが必要です。

②若者のキャリア観の変化

Z世代(1990年代後半~2010年代前半生まれの世代)の台頭により、キャリア観に変化が起こっています。

この世代は、仕事において働きやすさを重視する傾向があるといわれています。

一方、他院との差別化のために休日診療や夜間診療を行う歯科医院が増加していますが、これによる労働者への負担の増大は、Z世代のキャリア観と相違があるといえます。

働き方改革などで若者のキャリア観との差を埋めていくことは、若手の人材定着率を上げるための大きな課題となるでしょう。

③女性活躍への対応

歯科業界に欠かせない人材である歯科衛生士のほとんどは女性です。

そのため、女性が活躍しやすい環境づくりを行っているかどうかが、今後の人材獲得競争の明暗を分けることになります。

未来予測を踏まえた歯科医院の6つの課題と対策

最後に、今後の安定した歯科医院経営を実現するための課題を6つ紹介します。

1. サービス品質の向上

患者さまの満足度を上げるためには、質の高い歯科治療を提供することはもちろん、十分なスタッフ教育を行って歯科医院全体のサービス品質も高める必要があります。

「治療が時間通りに終わる」「治療までの待ち時間がない」など、来院される患者さまのニーズを汲みとり、患者さま中心のアプローチをしていくことが重要です。

2. 最新治療法の提供

ニーズの高い審美歯科などは、他院に先駆けて最新の治療法に対応することで、大きく差別化を図ることができます。

自院で注力したい診療分野においては、最新の治療法を提供できるよう技術習得・設備投資をしていきましょう。

3. 高齢者向け治療の充実化

食育・口腔ケアや訪問歯科など、高齢者に寄り添った歯科医療の環境を整えることは、高齢の患者さまのロイヤリティを大きく向上させ、患者さまの定着に繋がります。

なお、高齢者の歯科治療においては、年齢だけでなくさまざまな因子を念頭に置いて対応する必要がありますので、スタッフの教育含め、医院としての診療方針をしっかり決めておくことが大切です。

4. DX(デジタルトランスフォーメーション)の導入

医院のデジタル化を行うことで、患者さまの利便性向上や治療・窓口業務の効率化が期待でき、医院の差別化を図れます。

歯科医院におけるDXの例を以下に挙げます。

  • WEB予約システムやデジタル診察券の導入による患者さまの利便性向上
  • レセプトコンピュータの導入による受付業務の効率化
  • 自動精算機の導入による人為的ミスの防止
  • 口腔内スキャナーの導入による患者さまの型取り時の不快感軽減および時間削減

5. Webマーケティングの実施

現在はインターネットを活用して医院選びをする人が増えていますので、歯科医院側もホームページなどで自院の魅力を伝えていく必要があります。

そんな中、ホームページは開設しているものの、その他のマーケティングについては取り入れていない歯科医院がほとんどです。

歯科医院におけるWebマーケティング例を以下に挙げます。

  • SEO対策(ホームページを検索結果に上位表示させる施策)
  • MEO対策(Googleマップの上位に表示されることを目指す施策)
  • リスティング広告(ホームページを検索結果の最上位に出すことのできる有料広告)
  • オウンドメディア(ブログやWebマガジンを運営し、コンテンツを蓄積しながら自院に関心のある患者さまを集中的に集客する)
  • SNSやYouTubeの運用(ホームページへの流入経路を増やす)

6. 人材確保と働き方改革

歯科医療従事者の人材確保のためには、採用活動と労務管理の改善が必要です。

採用活動においては、求職者に「ここで働きたい」と思ってもらえるように、求人票やホームページを魅力的に見せる工夫も重要です。

また、労務改善においては、女性でも長く働きやすい職場環境を考慮することがポイントです。

自院の課題を正しく認識して安定経営を実現しましょう

昔と比べて歯科業界を取り巻く環境が大きく変わっているのは事実です。
自院の現状と課題を正しく認識して対策に取り組んでいきましょう。

なお、本記事でも説明した通り、歯科業界は深刻な人材不足に陥っています。
スタッフが定着しなければ、採用にコストや時間が取られて、他の課題に取り組む余裕もなくなります。
弊社では、歯科医院の採用成功のためのセミナーを開催しておりますので、人材獲得にお悩みの理事長・院長先生はぜひご参加ください。

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